アクロイド殺害事件

今日の私をミステリィ狂足らしめる直接の原因を作った作品。ちなみに言うと初クリスティ、でこれ。故に、読了した時の衝撃は凄まじかったです。

論点はずばり、ロジャー=アクロイドを殺害せしめた犯人は誰か? その一点に付きます。というか、この作品に対するコメントはこれ以上、思い浮かびません。引退して南瓜作りに精を出していた私立探偵エルキュール・ポアロ氏の前に期せずとも表れた村の名士殺害事件。ポアロの探偵活動、そして推理をメインとして、アクロイド氏殺害前後の行動は、同村の医師の記述により語られます。錯綜する人間関係を読み解き、ポアロが最後に到達した『答え』は、推理小説を殆ど知らなかった私を驚嘆の渦へと巻き込むに十分足る内容。勿論、そうでない人もこれを初めて読んだ時は、真相を目の前にして暫く、何も考えられなくなる筈です。

ちなみにこの作品、海外作には非常に珍しいことに『麻雀』が出てきます。彼らの打ち合いは、麻雀が好きな人にはくすりとするようなものではないでしょうか――私は麻雀を知らないので、余り場が読めなかったのですが。この場面以外にも、他愛ない会話場面が瑞々しく描かれていて、それがきちんと解決に絡んでいるものだから、尚更のこと上手いと思いました。個人的には同氏の作品で『ナイルに死す』の次に好きな作品です。

あと、この作品について行われている論争なのですが――未読の方に配慮して一応私は『フェア』だと思う――とだけ言っておきます。あと、この作品を読んでも絶対に真相は他人にバらさないように。どのようなトリックが使われているかを話しただけでも、ネタバレになるので、口を噤んでおきましょう。私からの、個人的なお願いでした。

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