あとがき

初めまして、あるいはお久しぶりです。

永遠の零細文章系サークル「La Mort Rouge」管理人、仮面の男です。この度は「夜啼鳥奇譚」をお手に取って頂きありがとうございます。

ここから先は色々とネタバレになるので、未読の方はまわれ右をお願い致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の話は封獣ぬえをめぐる連作中編です。

その前にまず、サークルカットの予告と異なる内容であることに戸惑われた方もいるかもしれません。すいませんが、当初予定していた話は収拾がつかなくなり、没となりました。多分、この世に出てくることはないでしょう。あるいは別の物語にプロットが吸収されて顔を出すかもしれませんが、作者以外にはおそらく窺い知ることはできないはずです。

去りし物語はさておき、実を言うとかなり切羽詰まった段階での破棄でした。いっそもう冬は飛ばして次の作業に入ろうかなとも考えたのですが、そんな折、九月に長野、新潟と旅をした思い出が、おりはさんの封獣ぬえに関する覚書や、以前海綿さんに聞かせてもらった話と上手く結び付き、その結果として封獣ぬえが結界を抜けて外の世界を巡るという話が漠然と形になりました。

おそらく100ページくらいのあっさりとした内容になるなと当初は考えていたので、冬には余裕で間に合うという目算だったのですが、書いてる途中で話を二分割してそれぞれにそれなりの長さを与えなければならないことが分かりました。最初から分かっていろと言われそうですが、物語には書き始めてから気付くことが沢山あるのです。その後、紆余曲折あって244ページになりました。11月下旬から12月上旬にかけて、データが消失の憂き目にあったことも含め、気がつくと締切ギリギリでした。ただその甲斐あって、コミケという大きなイベントに胸を張って出せる分量にはなったと思います。

冒頭でも述べました通り、本著は封獣ぬえにまつわる二つの物語から成っています。

ぬえの過去話は元が非常に有名なこともあって既に多くの解釈が出回っているはずですが、その中でも相当に異色の内容であるはずです。ネタバレしても良い場所なので少し詳細に述べると、イザナギ/イザナミの最初の子供は不具ではなく流産だったのではないかという、やや冒涜的な説に基づいた正体を提示しています。その説と常陸国に伝わっていた夜刀神の伝承を合わせ、ぬえが妖に目覚め、やがては平安京を脅かす、夜の怪異になるまでを割と克明に描いています。

もう一つは幻想郷の面々が外世界にやって来る、東方界隈では現代入りと括られるジャンルの話です。こちらはもう数が多いと割り切って、かなり好き勝手書いています。ただ、これ旅行記まんまですよね小説書こうぜ! と言われる事態だけは避けるため気をつけたので、あまり現実的ではない描写もそこかしこにあったりします。のっぺらぼうの蕎麦屋には是非とも遭遇してみたいですね。

Webなので余白は限りなくありますが、語ることも尽きたためここからは謝辞です。

最初に査読を依頼した銅おりは様、茅野らほい様へ。急で時間のない依頼にも拘わらず、誤字/脱字/誤用だけでなく歴史関連の指摘まで頂けまして、本当に助かりました。前々回のときもそうですが、やはり一人でチェックできる範囲には限界があるのだということをしみじみと感じた次第です。この場を借りて御礼申し上げます。

次に早苗さんリストの募集に答えて頂いた方々(順不同: @VicugnaPacos, @hypno_flac, @bird_hunter_mad, @sugarAsalt, @muto031007, @no_name_life200, @hase_yuu, @crossI_360)へ。本文では話の流れからあまり長くするのも難しく、結局のところハンターハンターネタしか採用できなかったのですが、相談に乗って頂きありがとうございました!

最後に、この本を手に取って頂いた全ての方に最大限の感謝を込めて、このあとがきを締めたいと思います。

願わくばまた別の場所でお会いできることを祈って。

2013年1月1日
仮面の男

 

 

P.S.

最後にどうでも良いことを一つ。本著の題名ですが「ぬえものがたり」と読みます。