『電脳コイル ロマンアルバム』[徳間書店]

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発売日を把握し損ねるという、ファンを公言している人間にしては無様な有様でありましたが、この先週末今週末とかけて何度か通読させて頂きました。


これでアニメ関連のグッズは全て完了、残すは小説版の完結だけ……ゼーガに比べたらまだ展開は残っているのですけれど、しかし最早作品としては完全に閉じられつつあるようで、何とも寂しい限りです。


これまで何度も繰り返してきましたが、もし本編に手をつけていない方、手をつけようか迷っている方がいましたら、その迷いは時間の無駄だ! 直ちに観始めるべきだと声を大にして言っておきます。


2007年に放映された作品の中でベストであるのは当然のこと、ここ数年を見回しても本作ほど全編に渡って完成され、ジャンルを横断し、完成度が高く、目を離す隙もないほどの密度を持った作品は一つから二つあるといったところです。



さておきこのビジュアルファンブックですが、特に目を惹く派手さはありませんが、資料的価値は非常に高いものでした。全体の概要から始めて各話のダイジェスト、作品の世界観を支える設定の具体的な説明から、製作者のインタビューに至るまで。アニメを観終えた人間が知りたいと思うことを過不足なく詰め込んだ内容となっております。特にイマーゴ、電脳メガネなどのガジェットとしてあり作中であまり説明されなかった部分に頁が割かれてあるので、興味のある人はそこだけ一読しても良いのではないかと。


個人的に興味深かったのは、アニメの製作工程についての一部始終について書かれたパートです。


緻密な設定に加え、全編を通して恐るべき量の伏線を張り回収した作品であるから、26話の内容をかっきりと決めきった後で製作したのだとばかり思っていたのですが、監督を中心とした作話に携わる人間の心情や懐事情で結構ダイナミックに当初の予定を変更する――といったことを何度も繰り返したらしいことが書かれていて、正直非常に驚きました。


しかも製作が非常にタイトな中でそれをやるというのは――ある程度の安全弁は仕掛けておいたのでしょうし、ギリギリの要望を実現するスタッフたちの『スタンドプレイから生じるチームワーク』具合の素晴らしさがあり、そして監督の才能と経験に裏打ちされた細かい判断があったことは間違いないのでしょう――それらを差し引いても私にはありえざる荒業としか思えませんでした。


そして、それを成しえた凄さというのが、製作パートを読んでつぶさに伝わってきたのでした。


アニメの現場は厳しいということだけは色々な所で聞くことができますけれど、それを間接的とはいえ初めて、身をもって感じた気がします。


あと、製作のパートを読んで仮面の男さんが思ったのは、きちんとプロットを組むのも大事だけれど、作話の最中で必然的に生まれる情の揺らぎを吸収できる余地を残しておくこともまた同じくらい大切なのだ、ということです。


所詮、物語を創るというのは理、情、どちらか一辺倒で成しえるものではない。理により過ぎては話は冷たくなり、情により過ぎては散漫になる。


二つを天秤にかけ、常にバランスが動く中で、最終的にどれだけの場所に着地させることができるか。絶えずそこに気を配れるのが、優れた創作者なのかなあと。それはとても難しいことであり、だから世の中には作家とそうでない人がいるのでしょうが。



やや話が脱線したきらいもありますが、要は作品だけでなく作品作りというところまで考えをゆかせるような、つぶささだったということです。作品思想、作中のSF関連を中心として、電脳コイルという作品に何かしら感銘を受けた人間ならば、手に取っても損はないかと思われます。


あ、もう一度言っておきますが、未見の人はまず観ることから始めてくださいね。

感想
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コメント

  1. Takaakira U より:

    徳間書店ね。

  2. 仮面の男 より:

    二日間も気付かなかったのか……_no

    光の早さで直しました。
    ご指摘さんくーでありますよ。

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