憶えておくべきこと
- 99 ここは跡地です
2007-05-05 [Sat] [長年日記]
_ [感想] 『ハンニバル・ライジング』[トマス・ハリス/新潮文庫]
いつの間にか四部作とされてしまった、トマス・ハリスのレクターもの最新作。若かりし頃のレクターを描くということで基本的には期待せずも、米国での『優雅な食生活』を描いた氏らしい作品になっているのだと予想して、心のどこかではやはり楽しみにしていたのです。
そんなささやかな期待にまで、思い切り肩透かしを食らわされた感じでした。ハンニバル・レクターの前日譚としても中途半端だし、復讐ものとしても淡々としてのっぺりで緊張感がない。『羊たちの沈黙』の凄烈さには及ぶらくもなく、また『ハンニバル』の円熟した悪趣味さに比べても到底物足りない。
誰もが言いそうな陳腐なことを言うなと釘を刺されそうなのを敢えて言うと、このシリーズは『ハンニバル』できっちしエンドマークを打っておくべきだったと思います。解説でそうではないと言ってはいるけれど、どう繕ったって怪物の怪物性、恐るべき恐怖の対象としての彼を解体しているのは間違いなく、あの奔放で縦横無尽な怪物を気に入っている人間としては、やはり辛いものがあったのでした。
更なる続編も仄めかしているようなのだけれど、多分もうハンニバルものは買わない……あー、でも出たら買ってしまいそうだ、幻滅すると分かっていても読んでしまいそうだ。それが分かってるから、徐々に精彩を失いつつありそれを何とかしようともしない作者に対して、何となくこうもやもやとしたものが募ってしまうのを止められないのです。寂しいというか、悔しいというか。
_ [感想] 『円環少女 5』[長谷敏司/角川スニーカー文庫]
仁のメイゼルを見る目が巻を追うごとにガチになってきている件について。メイゼルの言葉虐めっぷりも可愛らしくて、そちらの属性がないというのに、ゴロゴロと転がざるを得ないという体たらくですよ。
その反面、本筋は重い重い。圧倒的な力の差を描いたグレンのときと違って、じわじわと外堀を埋められ侵食される心悪さがあり、文章の半端ならぬ重みと力強さも相俟って、ずんと滅入ってくる場面が実に強烈。しかし一番キたのはあのラスト……次巻どう決着をつけるのか気になってしょうがありませんですよ。
しかし、この人の文体って読み難いのかなあ。私は長谷氏の文章って、真綿に染み込む水のように、頭の中にすーっと入って来るんですけどね。
