その5 〜推理編〜



 午前十二時 駅前へ続く通りで


「コホン。まぁ、みんな聞いてよ。いままで挙げてきた条件を考えれば、怪しい人がまだいる気がしてたんだよ……」

「そっか?」

「まさか、犯人は自分でした、とかじゃないだろうな……」

 いくらなんでもそんなことやったら、作者が狙撃されますってば。

「怪しい、ねぇ。
村内の怪しさトップスリーがここに居るんだし、」

「小夜さん、そりゃ誰のことですか」

「あんたらだっての」

 指差される、宏、蒼司、さやか。

「……。
 まぁ、律先生がいれば、僕らなんかその陰に隠れてられたでしょうけどね」

「それもそうだね……」

「あー、あの先生は掛け値なしで怪しかったからなぁ。なにやってても不思議じゃないって言うか、イテッ、殴ることないじゃん、小夜」

「もう、まだ一周忌も経ってないのに、不謹慎なこと言わないでよ。さやかだっているのに……」

 ここらへん、さすがに神社の娘さんですね。

「ああは、いいんだよ、気使わなくて。あやしーーのは本当だったしね」

「ううん、あたしは親にかわって入院費肩代わりしてもらってた事さえ、律先生がいなくなったあとに知ったぐらいだし……。お礼も言えずに、本当に申し訳ないって思ってるし。年下のさやかにも世話になりっぱなしで……」

「小夜ちゃん、気にされるとこっちも気使っちゃうよ。ね、気にしないでいこーよ♪」

「ありがとね。こういうとこだけは無駄に頼もしいわね、さやか」

「無駄は余計だよ……」


「あの、先輩。小夜さんとか、わかってくれる人はいいでしょうが……あの事は、もっと言ってやっても」

 ちょっと小声で蒼司くんが先輩に囁く。

「いいんだよ、蒼司くん。」

「それにしても、先生が、影であんなことしてたなんて……本当に、わからない人だった」

 特に贅沢な暮らしをしている訳でもなかった白河律。周囲は、あの絵が本当のところどれほどの価値で取り引きされていたのか、そんな事は知らなかったし、白河家が質素な生活をしていても、それは人々感心の外だった。仮に白河家の収入を知っていたとしても、借金だかなんだか、あることないこと想像して、やっぱり暮らしぶりのことなんて誰も気に止めなかっただろうけど。
 白河律と言う男は、なんとその収入の大半を、この常盤村の土地の権利に充てていたのである。それも、誰も持ち手がいないような、郊外の土地を選んで。

 おそらく、妻が、自分が、そして娘が大切に思っている、この村の風景をいつもでも留めておきたかったのだろう。この過疎の村といえど、現代では、なにが起こるかもわからないのだから、それを心配しての配慮に違いない。
 ちなみに相続税さえも、銀行の金庫に、弁護士に預けられた遺書と共に「私が死んだ時、あるいはそれに相当する事態が起こった時に、私の相続人が好きに使用するように」との但し書き付きで、土地を売り払わずになんとかギリギリ払えるほどの預金があったのだ。もちろん、相続人であるさやかが、土地を手放さずにその預金を全て使ったのは言うまでもない。

 柄にもなく、ちょっとシリアスになってしまいましたね。


 父さんの遺志を継ぐためにも、真犯人は突き止めなければならない。

 さやかは心の中であの星に誓うのだった。


 ”りっちゃんの、名に賭けて!”


 …………ちょっとしまらなかった。

 でも、敵討ちモノでもなんでもないんですけど、この話。




 そんなやり取りもしつつ、ちょっとしんみりしながら、冬の濁った陽射しを浴びて歩く一同なのでした。


 気を取り直して……


「で、彰くん、わたしが気付いた犯人のことなんだけど……
 もしかしてあそこであの人に…………ごにょごにょ」

「ん? そう言えば確かに」

「犯人がわかったのか?」

「宏くんと小夜さんも……ごにょごにょ」

「うーん、まさかぁ」

「そんなもんかなぁ……」

「先輩、僕にも教えてくださいよ」

「んー、ごにょごにょ」

「ああ…………しかし…………いや、思い出しました!」

「なになに?」

「実はあの人、学校では…………こんな話が」


「ふむふむふむふむ。それで謎はもう八割がた解けたも同然ね。これで逮捕よ!」

 なぜに八割。てか、八割で逮捕してもいいんでしょうか……。


「まあ、早く終わらせたいですね。寒いし」



 妙な余韻を残しつつ、次回いよいよ完結。


 犯人は誰だ!



 とぅびぃこんてぃにゅー♪



 次も読んであげます

 とっとと戻ります