初めまして、あるいはお久しぶりです。

永遠の零細文章系サークル管理人、仮面の男です。この度は新刊を手に取ってくださりありがとうございます。

さて、秘封倶楽部には宇宙というモチーフが複数回出てきますが、皆様にとって宇宙とはどのような場所でしょうか。

わたしにとって宇宙というものはあまりにも深く、あらゆるものを寄せ付けぬ冷厳さを持ち、しかしあまりにも浪漫に溢れ、惹きつけられずにはいられない魅力を持った場所です。そして何よりも人類がやがて目指さなければならない所であると考えています。

しかし2012年現在、人の在り方もそして法則も、宇宙を目指すものにとっては割合に冷たく、また高度経済成長期の楽観も既に消え、あまりの深さと対する辿り着けなさに諦観のようなものを覚えている人も少なくないのではないかと思います。わたしも半ば以上、人間は火星すらも植民星にできず、地上に括り付けられ朽ちていくのだと予測しています。人は結局のところ目指すところに辿り着けない……。

だからこそ物語の中くらい、宇宙を目指す人類があっても良いと思うのです。そのために科学、オカルト、秘封の設定、わたしの妄想を駆使し、宇宙を目指す人類を規定するため脳みそを搾り尽くしたその結実が本著『L4.UFONIA』になります。

とまあ、こんな風に少しくらいは真面目なことを考えていましたが、概ねは自分の好きなものを書きたいという強い欲求に従って書かれました。あまりにも趣味的過ぎて、他の方に読んで頂いて大丈夫なものかと不安になるくらいですが、SFというものは多かれ少なかれそのようなところがあるジャンルなので目を瞑りました。分からない/難しいということがあったら、どうか気軽に読み飛ばして、物語の筋だけを楽しめば良いと思います。まあ本作はなんちゃってですし、イーガンとかあの手のベリーハード……ルナティックSFに比べたら柔いものだと思います。きっと。

本作は鳥船遺跡のイメージを最大限に膨らませて作られましたが、しかし原型となる設定や物語は既にわたしの中に「東方Projectの最終回」という形でありました。新たなシリーズが頒布されなくなって数十年後、ふと思い出されたように頒布された最後の作品、というものです。

この発想は主にDream Wishというサークルで頒布された『夢から、さめる』という作品から喚起されたものです。後にルドルフとトラ猫さんの『弾幕鎧王』や、風城一希さんの『虚音立国完璧盤』辺りのイメージも、多少入り込んだような気もしますが、どの作品も『東方Projectが終わりを迎えたとき、それでも残るものは何か?』というものと真摯に向き合った作品であり、どれもべらぼうに面白いので手に取る機会があれば是非、読んで頂きたいものです。

それらの作品に比べると本作は若干楽観的ではあります。永夜抄から花映塚の間に流れた『東方Projectの新作はもう出ないのではないか?』という焦燥を知らない人間の書いたものであり、イーガンのある作品をオマージュしたためとも言えるのですが、しかし一つの世界が失われたとき、それでも残るものはあるのかという点に対し、わたしなりの答えは出せたと思います。また『静止する風の少女』から一貫して仄めかしてきた世界観に対する説明/回答にもなっていた(そのため本著は願わくば『静止する風の少女』以降に目を通してからの読書を期待したかったりします。単体でも読める内容ではあるのですが)はずです。

色々な思惑が入り込んだ作品ではありますが、楽しんで頂けると幸いです。

特に余白などを心配する必要はないのですが、書くこともなくなったので(まだあるような気もするのですが、そのときは追記することとします。自由に追加/修正できるのがWebの特権というものです)最後に謝辞を。

このたび表紙のイラスト/デザインを担当して頂いた山口悠様へ。このたびは無茶で曖昧な指定にも拘わらず、斯様に素敵なイラストに落とし込んで頂き、感謝のしようもありません。しようもないのですが、わたしには他の言葉がありません。本当にありがとうございました!

最後に、この本を手に取って頂いた全ての方に最大限の感謝を込めて、このあとがきを締めたいと思います。

願わくばまた別の場所でお会いできることを祈って。

2012年9月10日
仮面の男

 

 

P.S.

本作を読み終えたら是非とも一度、空を見上げ、星と月とあの娘のことを気にかけてやってくれると幸いです。