WARNING
この作品は、某葉っぱ系の番外編とは関係ない筈。
この話は、マルチサイトです。一人の話を見ただけでは、全ての背後関係は分かりません。

 

オープニング

始まりは何だったのだろう?

運命の歯車は、いつからまわりだしたのか?

時の流れのはるかな底から、

その答えを拾いあげるのは、

今となっては不可能に近い…

だが確かにあの頃わたしたちは、

おおくのものをにくみ、

おおくのものをにくみ…

なにかを傷付け、

なにかに傷付けられ…

それでも操られるようにして笑っていた、

夜の闇に呻き声を響かせながら・・・

(「クロノ・クロス」より引用、一部改定)

 

水瀬家の食卓 祐一篇

「答えろ、ドモーーーーーーーーーン」

(「機動武闘伝Gガンダム」より)

誰が言い出したのか、俺も正確には覚えていない。

ただ、気付くとKanonの主要キャラを集めて、水瀬家で鍋の会をすることが決まってしまっていた。

主要キャラとは、俺、名雪、秋子さん、真琴、天野、栞、香里、あゆ、舞、佐祐理さん、北川の十一人。

何故、とは訊かないで貰いたい。

俺の預かり知らぬ所で、勝手に話は進んでいたのだから。

ぐつぐつと煮える鍋からは、出汁の良い匂いが漂って来る。

しかし、その中の何人かはその鍋を見て戦慄していた。

何故なら、誰がどんな具材を持って来たのか、俺にも預かり知らぬ所であったからだ。

電気が消される。

夜の闇は、全ての色を覆い隠していた。

勿論、各々が投入する具材さえもだ。或いは、それは具罪と呼べるものかもしれない。

ここまで言えば、今から俺たちが何をするのかはお分かりだろう。

闇鍋、誰が名付けたかは知らない。

誰が発案したかも知らない。

ただ俺の話に寄れば、この鍋の果てに待つものは絶望と悪夢だけだと言う。

俺の転校前の友人から、闇鍋をやった元母校の先輩その他数名の、悲惨な話を聞いたことがある。

O原K平、S井M、特に二人のなれの果ては……。

いや、敢えて何も言うまい。

だが、ここに集っているのは、女性軍が殆どだ。

間違っても奇妙な具材を投入したりはしないと思うが……。

しかし、この話はギャグ系だ。気を抜いてはいけない。

だが、秋子さんの隣に座るのだけはやめた方が良いと思った。

ギャグ系において最強の破壊力を持つのは大抵、彼女だと相場は決まっている。

そう思って、俺は秋子さんの向かい側に座った。

ちなみに配置を紹介しておこう。

今回、大人数での鍋のために、ダイニングには大きなテーブルが用意されてある。

ちなみにどうして、水瀬家にそんなものがあるのか、俺は知らない。

座布団を引き、鍋を囲うようにして座る。

俺の両隣には、舞とあゆが座っている。その隣には……説明が面倒くさい。

詳しくは以下の図を参考にしてくれ。

水瀬家の食卓人物配置図

ちなみに、舞と佐祐理が隣同士に座っていると、フュージョンで天文部(検閲削除)

ぽちゃ、ぽちゃぽちゃ……何かが入れられる音がする度に、俺の緊張の度合いは強くなる。

俺もとっておきの奴を、採集しておいた。

山で適当に採集して来た茸に、食べられるか分からないような草類が幾つか。

ちなみに毒茸じゃないことは、確認済み。

故にワライダケを食べてケタケタ笑い回ったり…

ベニテングダケを食べてヤバめの幻覚を見たり…

セイカクハンテンタケなんて食べて、一騒動を起こすなんてことはしない。

俺だって、細心の注意を払っているのだ。

犠牲者にならないように……と。

鍋が閉じられて、瓦斯焜炉に火が灯されて数分、再び鍋の蓋が開けられた。

そこから漂う空気は……先程までの良い匂いが嘘のような強烈な臭気を放っていた。

「うぐぅ、へんなにおい〜」

「あうーーっ、何よこれ」

「……この臭い、嫌い」

幾つかの声が、闇の奥から聞こえる。

そして再び、焜炉の火が消される。

ちなみに今までのことは、全て秋子さんがやっていることだ。

意外に手際が良い。

もしかして秋子さんは、闇鍋をやり慣れているのでは・・・・・・との疑惑が走る。

しかし、そんなことはどうでも良い。

この匂いは只事ではない。

やはり、毒物を混入した奴がこの中にいると言うことだ。

裏切り者のユダ……それは誰なのか。

最後の晩餐にならないよう、俺は何かに祈った。

「合図をしたら、鍋に箸を入れて具を掴んで下さい」

秋子さんの合図で、一斉に箸を動かす俺たち。

その中で俺は、何かを箸で掴んだ。

何かふやけた……かなり大きな物体だ。

少なくとも食べられるものではありそうだが……。

俺は勇気を出して、一口それを食す。

「うっ……」

俺は思わず唸り声を上げた。ふやけた小麦粉の皮から飛び出した、生温い餡。

口の中で出汁と絡まって、絶妙に最低な触感を醸し出している。

べったりとして、それでいて癖があって……。

(あゆ……たい焼きを鍋に入れたな)

どうやら、あゆはユダの一人だったようだ。

その時、奇妙な断末魔が、闇の場を支配した。

「……人類の、敵です」

「無理すれば、食べれないこともありません……だって? あかね〜〜〜〜っ!!」

この声は、栞と北川だ。

その叫び声と共に、二人の気配がばったりと途絶える。

(何が起こったんだ?)

俺は戦慄した。

少なくとも、二人の意識を飛ばしてしまうほどの毒物を混入した誰かが、この中にいるということだ。

「おいしいよ〜、お肉」

「うぐぅ、あったかいイチゴ……」

「……卵」

「あう〜〜っ、梅干し……」

「……紅生姜?」

様々な声が聞こえる。しかし彼女たちはどうやら、毒物は掴まなかったようだ。

続いて、生き残った者? で、第二回目が行われた。

放っといても良いのか、俺には分からない。

ギャグだからと言って、超えてはならない一線があるのでは……。

しかし俺の手は、再び鍋に向かっていた。

掴んだものの形状を箸の手触りから察して、俺はほくそえんだ。

これは先程、俺が投入した茸だ。

毒が含まれていないことは、既に確認済み。

俺は勝利を確信し、口に含んだ。

上手い、なかなかの味にして、舌にピリピリと残る感触は……何だって?

馬鹿な、俺は毒茸なんて……。

「ふふ、ふははははははははははは、あはははははははははっ……」

笑いが止まらない。どうしてだ、俺は何処で間違ったんだ?

……選択肢を。

「キョウジ兄さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」

誰かの叫びが聞こえる。そうか、俺の食べたのはあの伝説の……

キョウジワライタケ……だったんだな。

そして俺の意識は、笑いの渦へと消えて行った……。

祐一篇 終了


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