ソードマスターの犯罪

今や、言わずと知れたミステリィ? コミックスの一大タイトルとなった『スパイラル―推理の絆―』のノベライズ第一弾です。城平氏の文章作品はどれも冊数が少ないのか、それとも2001年4月の段階ではスパイラル自体がまだマイナだったのか――これも手に入れるのに本屋を数件、はしごしないといけませんでした。ちなみに次作の『鋼鉄番長――』は平積みでしたね。この本には中編一本と短編が二本収録されています。

先ず、表題作。一読した感想は、先ず鳴海歩と結崎ひよのの会話が聡い折原浩平と明るい里村茜――っと、げほんげほん、非常に軽快で如何にも少年漫画のノベライズという感じでした。ただ、謎自体は本作よりもよりミステリィ仕立てです。道場随一の腕前の剣士が無残な姿で殺害された事件の謎解きを、歩は半ば無理矢理強制的に引き受けさせられるのですが、冒頭の『ソードマスター』と歩の剣道対決と真相が上手く結びついているところは凄く、上手いなと思いました。あと、これは次作にも言えるのですが、解決編に優しい雰囲気の漂うところが私的には好感触です。

短編の方はエニックスのウェブサイトに公開された作品の再収録なのですが『クラゲ二重奏』の方は、凄くお粗末。対して『ワンダフル・ハート』の方は、短いながらも結構巧いなと感じました。ああいう動機を持ち出すところが「ああ、名探偵に薔薇を」の作者なのだなあと思うこと頻り。総評で6となっていますが『ソードマスター――』が8、『ワンダフル――』は6、『クラゲ――』が4で相対的に6という評価になっています。表題作はミステリィとしてもお話的にも面白かったので、興味をもたれたら読んでみたら如何でしょうか。スパイラル本編のファンの方は星一つプラスかな?

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