今や、言わずと知れたミステリィ? コミックスの一大タイトルとなった『スパイラル―推理の絆―』のノベライズ第二弾です――って、前回と紹介が一緒ですね。今回は平積みしてあったので、一発でgetに成功。単行本のラインナップでもスパイラルはトップに来てたし、ここ一年の展開でかなりメジャになったと推測できますね、いや良きことかな。
近況はおいといて、内容は電波に近いミステリィでした。相変わらず、会話は聡い折原浩平と明るい里村茜――ですし、前半にでてくる『番長の世紀』という架空の読み物が素晴らしく笑えました。魔法番長、抜刀番長、ピストル番長、極めつけが鋼鉄番長――もう、何か明らかに一つの世界を超越しちゃってます。私は前半だけでも、この作品は読む価値あると判断します。かなりぶっ飛んでいて、面白いです。
それでいて、後半は前半の展開を活かしてミステリィ色に話は進みます。漫才的な話は入るのですが――そして、最後勿論、冒頭で述べられていた『解決』と相成ります。この『解決』がまた、今までのミステリィで読んだことのないタイプの解決で、ひどく感心しました。歩は解決の前に『心の密室を開く』と宣言します。その過程を、お楽しみ頂ければと思うのです。あと、気に入ったのはエピローグ。優しくそれでいて切ない感じを出させたら、この作者に叶う方はそういない筈です。
あとは前回と同様、ウェブサイトに掲載された再収録作品が一つ。こちらは非常によく見るタイプのものではあるのですが、非常に丁寧に描かれていて前作よりは良い感じ(私はトリックというものは、どう扱うかを考えるものであって、既出か否かというのは露骨過ぎない限り論じるのも馬鹿馬鹿しいものだと思っています)です。本編が9、短編が7――相対評価で8と相成りました。笑いと少しの感動と、非日常的不思議を欲する方には格好の処方箋かと。スパイラル本編のファンの方も、読んで損することはないと思われます。