薔薇の女

矢吹駆シリーズの第三弾です。第二作を読んでの感銘が深かった割には、手を出すのは少し遅かったりしました。先に『哲学者の密室』を読んでなければ――欝。

今回の事件は『薔薇の女』と呼ばれた俳優の障害とその影を巡っての殺人事件が焦点となります。俳優志望の少女が次々と襲われ、体の一部を切り取り持ち去るという連続猟奇殺人事件の巻き起こるパリで、いち早く『薔薇の女』と事件の関連性に気付いた駆。彼の推理に興味を抱き、ナディア=モガールが事件の解決を試みるもののそれはますます深まっていくのです。

内容は前二作に比べて濃縮された部分はあるのですが、それ故に少し物足りなく感じてしまいました。事件が混乱している真っ最中に探偵が推理を始めて、急ぎ足で幕を下ろしたという感じです。事件一つ一つはきちんと練られており、精緻な推理は相変わらずでしたが、話の本筋や哲学との絡みが少なく薄いため、このシリーズに慣れた私には少し物足りなかったです。ただ、全体に漂う緊張感といい駆の相変わらず素っ気ない態度といい、見所は沢山あります。

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