あとがき

 

 初めまして、あるいはお久しぶりです。

 永遠の零細文章系サークル管理人、仮面の男です。

 ここを読まれているということはおそらく本著をお読み頂いた後だと思います。もしそうでない場合、ブラウザの戻るボタンを押して前のページに戻ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それでは改めて。このたびは「蓬莱の杜」をお読み頂き、ありがとうございます。

 

 本作は弊サークルで頒布するものとしては珍しく仕掛けのある装丁の本となっております。リバーシブルも袋とじも子供の頃に読んでいた雑誌の付録などで時折見かけることがあり、こうした装丁を一度はやってみたいなあと前々から思っていましたが、その望みがようやく叶ったことになります。ただ再現しただけでなく、物語が本の中心に向けて収束していくという、珍しい読み方ができるよう工夫を凝らしました。そういったところも併せて、楽しんで頂けたならば幸いです。

 

 次に本文に関して。本作ですが、何度かTwitterではほのめかしたのですが、故HUMANから発表されたADV「トワイライト・シンドローム」に影響を受けております。10のシナリオより形成されており、主に都市伝説を解明するため三人の高校生が夜の街や学校、公園などに存在する曰く付きのスポットを巡るというもので、かねてより秘封ものとの親和性が高いと考えていました。

 

 作中に「雛代の杜」「裏側の街」と名付けられた、作品内でも特に評価の高いシナリオがあるのですけれど、その相の子のような内容を(多分に逸脱した箇所もあるのですが)目指しております。ネタバレになるので多くは語りませんが、先にこの本を読んでからゲームをプレイすると、ああこういうところに影響されたのだなということがよく分かると思います。秘封好きには是非ともプレイして欲しい作品なのですが、既にゲーム事業から撤退したメーカーの作品でして版権の都合上なのか、PSアーカイブスにも公開されていない状況です。確か中古価格はそんなに高くなかったはずなので、もし興味がありましたら手を伸ばしてみるのも良いかもしれません。初代PSのソフトはPS2でもPS3でもプレイできたはずです。本当はそこから派生してムーンライトシンドローム、夕闇通り探検隊、シルバー事件辺りも紹介したいのですが流石にくどくどしいのでここは名前を挙げるに留めておきます。

 

 閑話休題。

 

 今回の舞台は蓮子の実家がある東京なのですが、いくつかの災害が重なった結果(作中ではほんのり語る程度ですが局所的な温暖化、富士山の最終噴火、そしてこの世に複数の法則が並び立つことになる鍵となる現象)としてぼろぼろになっています。遷都するような状況ですから並大抵ではないですよね、ということで身近な場所を壊してしまうのは非常にしのびないことですが、廃都東京をかなり好き勝手に演出しました。

 

 次にスカイツリーです。こういう話だと鍵となる建築物は東京タワーになりそうなんですが、とある集まりにてスカイツリーの実物を間近で見る機会がありまして、未来の話ならば断然こちらだなという気持ちになりました。西側に発展が集中しているという設定は最初の頃からあったので、その点からしてもスカイツリーのほうが立地的に合っていたのですが、やはり東京タワーに思い入れのある人間としては何とか組み込みたいと考えるものです。伝説のマジックナイトになりたい人生だった……というものの話を書いているうちにどんどん愛着が湧いてきまして。まだ展望台に登ったことはないので今度、登ってこようと考えています。ちなみに「蓬莱の杜」というのは蓬莱のご神木という意味です。スカイツリーがご神木というのも変な話ですが、まあ名前が名前ですしね。個人的に東京タワーと同じくらい倒しがいがあると思うので、もし東京を舞台にする話があれば倒してみるととても盛り上がると思います。

 

 秘封倶楽部についてですが、本作においては表と裏、二パターンの蓮メリがいるのですけれど、性格や立ち位置がぐるんと反転しております。表では蓮子に対してメリーが届かぬ想いを飛ばし、逆に裏ではメリーが蓮子の手を強く引いていく関係でして、一粒で二度美味しい内容となっております。裏の押せ押せメリーは、普段こういう立ち回りのキャラをあまり書かないため、動かしていて本当に楽しかったです。同じ世界観ではないところでもう一度、瞳にハートが入っているに違いないメリーは書いてみたくあります。

 

 最後は、この話の黒幕についてです。永琳に割と辛辣なことを言わせているのですが、彼女は幻想郷にいた頃からずっと常に周りに配慮し、気苦労を負う生活を続けていました。寺子屋で子供に教育を施すようになってからはより重圧も強くなっていたはずです。そんな彼女がいつしか、必ず自分のことを看取ってくれるであろう存在に依拠するようになったとしてもおかしくはありません。そんな彼女がしかし先に死んでしまったとき、彼女はそれに耐えられないのではないか。妹紅が彼女に対して抱いた覚悟を彼女は有していないゆえ、普段の彼女ではやらないことにも手を染めてしまうのではないだろうか。優しい人間であるがゆえに。その疑問もまた本作を記す動機の一つとなりました。優しい人による犯罪を描きたかったのです。

 

 彼女の末路がその本性通りに優しいものであったかは、各々に委ねようと思います。

 

 

 では長々と綴ってしまいましたが、最後にごく簡単な謝辞を。

 まず表紙を描いてくださった心葉御影さんへ。全体の構成と装丁ゆえ面倒な指定がいくつもあったのですが、辿々しい説明を汲んでいただいたばかりか、作中の細かいネタまで拾ってくださり、頂いたイラストには予想していたよりもずっと素敵な秘封が現れていました。この本がより魅力的に、ミステリアスになったのは間違いなくこのイラストのお陰です。このたびは本当にありがとうございました。

 次に本作を査読してくださったZeitさん(@zeit0231)へ。短期間であれだけの分量を押しつけてしまったにも拘わらず、きっちりと確認して頂いて本当に助かりました。やはり自分で読んだだけでは気付けない箇所があるのだな……。

 そして最後に、ここまで読んでくださった皆様に感謝を込めてこのあとがきを〆たいと思います。

 願わくば別のあとがきで出会えることを。

 

 

 P.S.

 冬ですが、霊夢と空を飛ぶことをテーマにした長編を頒布する予定です。

 題名は「浮世の巫女」で、おそらく(上)がつくと思います。本作で出てきた「博麗の巫女」の設定と、神隠しにあった「彼女」のこともまた語られる予定です。

特設トップに戻る