その6 〜真相編!〜





 ガチャ……

 暗闇の中、男がディスプレイの中で一心不乱にキーを打ち込んでいる。


 ”名無したんのエロ画像キボンヌ ハアハア”

 ”名スレの予感!”



「次はやふおくだな……」


 ”○○○の同人誌 現在○○○○円 残り○○時間……”


「クソッ、あと少しか……ブツブツ」


 カタカタカタカタ…………






「よし、探せ!」


「?! なっ、なんなんですかキミ達?! いまいい所だったのに……」


「白河警部! ガイシャの所持していたものと同じ物品を発見しました!」


「似たようなブツもわんさか出てきました! こん? しづく? とぅはーと? エアー? みずいろ?


 ハードコアなモノは作者があんま知らないんです。すいません。


「とにかく、似たような二次元の絵のゲームがいっぱいだよ!」

 似たようなとは失礼な。いいですか、そもそも原画師の……(以下略


「てか、あんたクソスレ立てんなよ……」

 ごもっとも。




「「「「「若林鏡太郎! 現行犯で逮捕する!」」」」」




 ウ〜〜〜 ウ〜〜〜 ウ〜〜〜〜〜〜〜(サイレン音)




「ううっ、兄さん、早く刑期を終えて戻ってきてね……」

 ハンカチで涙を拭う、犯人の妹。でも、こめかみに青筋立ってますが。

「当たり前よ! こんなアホなことで兄が晒されるなんて、恥ずかしさで涙が出るわっ!」

「美絵ちゃん、ここは事実を冷静に、いたっ」

「さやかはうるさいっ!」

「あの人、家では猫かぶってたんですねぇ……」


 ひとつの物語の終わりはいつもせつなく、犯人の逮捕は皆の心にある種の感慨を…………そんなもん、ないか。




「しかし白河さん、どうしてあの医者が怪しいとおもったんだ?」

「だって、わたしあの人の診察室で机の上にパソコンがあったの知ってたし、当然使えるってことわかるでしょ。それに、
なんとなく、怪しかったし♪

 なんとなくかい!

「でも、鞄の中にモノ入れて反応を見ようとたくらむほどには顔見知り、入れるチャンスがあった、新品のソフトを買える資金力、引き篭もってなにかやってそうなアヤシさ、それ考えれば、答えは自ずと導かれたわ」

 一応、考えてたんですね。

「そういや、蒼司、おまえ、犯人がわかったって言われた時、なんか意味ありげなこと言ってたじゃん。あれはなんだったんだ?」

「ああ、実は……若林さん、当然この土地の出身ですから、僕や先輩と同じ中学、高校に行ってたようで、名前に聞き覚えがあったんですよ」

「それが、いったいどうだって言うんだ? よっぽど学校でなんかやらかしてたのか?」

「なんと言いますか…………。あの人、高校に細々とあった漫画研究会とパソコン同好会の面々では、
『神』の二つ名で呼ばれていたのを思い出しまして。パソコンと言えばまぁそのままですし、漫研といえば、二次元、オ○ク、同○誌……、うちの高校は弱小ながら、一時期即○会で伝説となった本を出したことがあるそうで、その立て役者が彼だったとか……」

 腐った神もあったもんだね……。

「なんだかよくわからんが、
要するに怪しかったんだな

 さすがにちんぷんかんぷんな表情の面々ですが、蒼司くん、あなた変なことやたら知ってますね。

「人徳なんです」

 さいですか。



「とにかくこれで事件解決ですね。悪は滅びた…………」


「しかし、人の心に悪の影がさす限り、第二第三のドクターが現れることだろう……」


「もう現れなくていいってば……」


「え゛ー? つまらないよ、小夜ちゃん」


「「(こんなヤツラに捕まるヤツも心底不幸だなぁ……)」」(彰、宏)




「さて、もう二度寝する気もありませんし、遅い昼ごはんでも食べましょうか、先輩」


「わーい、美味しいの作るからね♪」


「……う、先輩に任せたら夕方まで食べれないような」


「むむっ、わたしだって多少は段取りも上達したんだから!」
「(ぼそっ)でも…………ちょっとだけは手伝ってね」


「はいはい、わかってますよ、先輩」


「じゃ、帰ろっか♪」


「早くストーブ当たりたいですからね」




”白河探偵事務所 事件簿1 「冬の華音計画事件」(解決)”



 1て……2は絶対出ませんってば。てか、結局最後まで事件性はなかったし。




 (めでたしめでたし?)



 〜完〜








 えぴろーぐ。



 (取調室にて)


「刑事さん……ほんの出来心だったんですよ。彼にKa○onの良さを広め、ここを
カリスマ同人サークルの根城に……」

「……。」

「だって、
おかしいでしょう?! あんなイ○ポヤローがポニテ少女と年上美女独占して、変態絵描きが白川さんとこのお嬢さんかっさらって、ぽっと出の金持ちの妾腹がどっからか拾ってきた幼女とあげくに妹まで家に囲い込むし、病院の中で目をつけてた小夜ちゃんまで奪われていくんですよ?! 他に画面あるキャラは自分の妹だけですよ?! さすがに家庭用も出る作品で実の妹に手出しできないし、僕は他に道はなかったんだ!」

「……。」

「まずは単純バカそうなヤツを洗脳して、次第に賛同者を増やし、やがてかつて散った同志たちをまとめて、美少女比率がやたらに高いこの村の素晴らしさをネットで噂ばら撒いて、それから、それから…………ううっ」


「……ま、カツ丼でも食えや」


「うう、湯気が目に染みる……」






 そしておまけ。


 ……一つの事件が終わり、静寂を取り戻した常盤村。
 上代蒼司は多分平和に、寒さに少し震えながら、冬を過ごしている。

 そうそう、あれから僕らは彼のPCを勝手に没収し(怪しいデータは勝手に消去してやって)、ソフト(『普通の』ものも彼の家にはたくさん置かれていたのだ)動かしたり、いろいろいじったりして存分に楽しんだのだけれど、小夜さんがいなくなった後、面白半分に起動した(もちろん先輩の監視付きである)、例の「Ka○on」とやらが、意外と面白かったことも付け加えねばならないだろう。
 と言うか、
むしろ先輩の方がハマってしまっているような…………、まぁ、いいんですけどね。寒い街に引っ越しましょう! とか言われても困るけれど、先輩も寒いの苦手だし、そんなこともないだろう。

 ただ、唯一、たいへん困ることがひとつだけ……


「ねぇ、蒼司くん、この絵、どう思うかな?」


 お願いです。先輩。僕はそんな恐ろしいことは答えられません。


「もしやこの人物、デッサンが狂ったように見せかけた天才のシュールリアリズムの絵描き…………」


 ああぁ、無邪気な追求は死を招く…………それとも先輩わざとなんですか(泣

 頼みます。それ以上何も言わないで下さい。



 
……誰も信じないかもしれないけれど、上代蒼司は、この件については永久的にノーコメントとさせて貰いますっ(泣





 ほんとうにおわりっ♪











 あとがき

 (注意)

 ●作者は二章コンビが好きなので、おかしな方向に贔屓しています。
 ●キャラの不当な扱いについての抗議はどうかご勘弁を(汗

 ○作者は鍵のゲームがたいへん好きです。本当です。本当なんだってば!

 ☆できれば石は投げないで下さい。そのかわりに感想くれると嬉しいです。


 (いいかげん解説)

 投稿先が、かのミステリ+KanonのSSなサイトさまと言うこともあり、多少は意識して書いたんですが、全くのギャグに(^^;
 真犯人も言わずものがななあの人だし、動機がイッちゃってるし(死
 一応、登場人物は、彼のことをちゃんと知っているのか、あと、病院外であった可能性、そういったものが意外に少ない(あの中で病院外での彼の姿を知る可能性がある人間はさやかと蒼司のみ。あとは常盤村に来たのはあの夏以降で、地元の姿知らないはず)ということで、解決に時間がかかったんですよ、たぶん。彼も猫被ってたってことで……。
 誤認逮捕は…………ネタですが(笑。
 「ヤス」は、水夏ビジュアルファンブックのネタですね。普通に市販されてますので、未読の方はどの場面で使われたか確認してみるのもいいかも?
 あと、真犯人の彼が、暗闇の中でパソコン打ってた場面の描写は……、あるところで見かけたSSで使われてたもので、それがあまりにも笑えて、彼のキャラにもピッタリだったんで、それ参考にして書いちゃったのです(違う作品のSSではありますが)。まぁ、セーフかなぁ(汗

 書きたいことやネタを詰め込んでたらやたらとだらだら長くなってしまったのですが……楽しんでいただけましたでしょうか……?
 思うところがありましたら、ほんの一言二言でもいいので、感想いただけると嬉しいです。

 では、こんなSSを受け取っていただいた仮面の男さまに大いなる感謝をしつつ、失礼します。

 (02/6/22 鷹観コウト)


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