一九八八年六月のある日、依神女苑の自宅に姉の依神紫苑が姿を現した。
紫苑は三度目の結婚生活に失敗し、他に頼る所もなく、女苑の家にやって来たのだ。
前回も同じように転がり込んできた上、奇矯な言動が目立つようになった紫苑に翻弄される女苑だが、寝言の中に何者かからの暴行を示唆する苦痛を聞き取ってしまう。
単なる夢なのか、それとも悪夢のような現実なのか。今と過去が交錯する中で女苑はやがて一つの真実に直面する。果たして紫苑を襲っていた苦痛とはいかなるものだったのか。そして女苑のあり得ざる記憶が示す更なる深遠とは。
昭和という幻想の時代の果て、憑依華異変のもう一つの目的が明らかになる。