六月……。

それは天気予報も見ずに外に飛び出した輩が、コンビニに一度しか使わないであろうビニール傘を買いに走る季節。

真琴「あうーっ、肉まん頂戴」

茜「……ゲームが違いますよ」

茜、コンビニでバイトする

--This is the gate of Winter--

真琴「言ってる意味が分からないっ。それより早くにくま……」

チキチキチキ、すちゃっ。

茜、カッターナイフを真琴の首筋に宛がう。

茜「ゲームが違うと言ってるでしょう。人の言うことは素直に聞くものです」

真琴「あうっ、あうっ……」

茜「……さよなら、本当に好きだった人」

真琴「真琴はあんたのこと好きでもなんでもない〜っ」

茜(やっといなくなりましたか……。それにしても、みゅーと同じような性格だから扱うのも疲れますね)

栞「これ、全部下さい〜」

茜「貴方、誤魔化してますね」

栞「えっ?」

茜「こんなに色々なものを買ってますけど、本当に必要なのはこのカッターナイフだけでしょう?」

栞「ど、どうしてそれを知ってるんですか?」

茜「そして、何の意味も無かった十五年の人生に幕を降ろそうとしているんですよね」

栞「……そんなこと言う人、嫌いです〜」

茜(……人間って、本当に弱い生き物ですね)

 

舞「……これ、下さい」

茜(何時からこの話はKanonになってんでしょうかね……)

茜「……牛丼、温めますか」

舞「……お願いする」

茜(先頭に名前が付いて無いと、キャラの区別ができないです……)

舞(牛丼……)

茜(頭の出来は全然違うんですけどね……)

舞(美味しそう……)

 

名雪「イチゴサンデ……」

茜はコンビニの入口に、一枚の用紙を貼り付けた。

『北国の人間、来店お断り』

 

茜(全く……)

七瀬「うわあ、急に降ってきちゃって……ってあんた」

茜「……おはようございます、贋乙女さん」

七瀬「誰が贋乙女よっ……って、弁当屋のバイトはどうしたのよ」

茜「実はあの日、バイトが終わった後、店主と二人きりになって……それから自分が如何に少女趣味であることを切々と解いて見せ……」

七瀬「何となく、話のオチが読めてきたような……」

茜「いきなり襲ってきたので半殺しにしたら、首にされました」

七瀬「半殺しってあんた……いや、あんたならやりかねないわ……」

ひゅん。

茜の投げたカッタナイフが、七瀬の髪を数本切り裂く。

茜「あれを交わすとは……」

七瀬「だから、あたしが何か言う度に刃物投げるのやめなさいよ」

茜「……カッタナイフだからましな方です」

七瀬「どっちにしたって刺さったら死ぬわよ……ったく」

茜「それで用件は?」

七瀬(こ、このアマぁ〜〜〜)

ひゅん。ぶちぶちいっ。

茜「……神技、ニーベルン・ヴァレステイ(注1)」

七瀬「あ、あたしのお下げがあ〜〜」

茜「……お似合いですよ」

七瀬「ぐすん……あんたと関わったあたしが馬鹿……って、言ってる側からナイフ構えないでっ」

茜「チッ、気付きましたか……」

七瀬「いいわ。それよりビニール傘一本頂戴」

茜「天気予報も見ずに慌てて家を飛び出したんですか……間抜けな人ですね」

七瀬「シクシクシク……」

茜「高畠さん(注2)の真似ですか?」

七瀬「あたしをあんな変態医師と一緒にするな……ううっ、今日は最悪の日だわ」

茜「……それは災難ですね」

七瀬「その九割九部は貴方のせいよっ!!」

ひゅん。ぶちぶちいっ。

茜「……天翔龍閃(注3)」

七瀬「お、おさげが……」

茜「これで長さがぴったりだから、丁度いいじゃないですか」

七瀬「あんた本当の……いや、もう何も言わない」

茜「ところで七瀬さん」

七瀬「ん、何よ」

茜「お弁当、美味しかったですか?」

七瀬「さよなら、もうこの世界に未練なんて無い……」

 

繭「みゅっ……こわいおねいちゃんだあ」

茜「人の顔を見るだけで逃げ出すなんて……今度お仕置きが必要ですね」

みさき「こんにちは、茜ちゃん」

茜「……こんにちは」

みさき「あれ、茜ちゃん、お弁当屋のバイトじゃなかったの?」

茜「……実はこのようなことがあって」

みさき「……ふーん、そっかあ。一層のこと、全殺しにしちゃえば良かったのに」

茜「……そうすると、法に触れますから」

みさき「……そっかあ。ところで茜ちゃん、夕焼け綺麗?」

茜「……今日は雨です」

みさき「そっかあ、夕焼け出てないんだ」

茜「……お待たせしました、全部で65310円になります」

みさき「うん、いつものようにつけといて」

茜「つけって……コンビニでそんなこと出来るんですか?」

みさき「うん。ここの店長とは仲良しだからね(ニヤ)」

茜(……嘘臭い)

みさき「明日は晴れると良いね」

茜「……ええ」

茜(川名みさき……何時か戦う運命にあるかもしれませんね)

 

店長「里村さん、御苦労様」

茜「……いえ」

店長「でも、結構客が入ったみたいだけど」

茜「……半分は川名さんが買って行きました」

店長「げっ……あ、あいつか?」

茜「店長、川名さんってどんな人ですか?」

店長「……あいつは、真性の悪魔だ」

茜(そこまで人に言わしめるなんて……)

茜「……具体的には?」

店長「それは……メソ……ぎゃああああ、頭がチリチリするううううう」

 

こうして店長が謎の発狂を遂げたため、茜は再び職を失った……。

みさき「……クスクスクス」

 

今回のバイト料 5000円

憧れのぬいぐるみまであと 477500円


(注1)戦乙女の秘技、但しななぴーは使えない。

(注2)EVE ZEROにでてくる変態検死医。

(注3)飛天御剣流、最終奥義。

 

あとがき

最早、何も言うまい。

みさき先輩の秘密とは何か……。

明らかになりません。

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