八月中旬。

西高東低(注1)の暑さ真っ只中、海水浴場は大繁盛。

勿論、ボッタクリ紛いの出店も売れ行き好評商売繁盛。

そんな夏の日。

茜「こんにちは〜っ、茜です〜っ。今までチマチマバイトしてきましたが実入りが良くないので、一層のこと店を立ち上げることにしてみました〜っ。今ならくそ生意気な子供を連れた家族や、妙に露出度の高い水着を着た生意気な女性や、やけにベタベタした所を見せ付けるカップルのお蔭で海の家なら稼ぎ放題大富豪間違い無し、私の欲しいものもすぐに手に入るって寸法です〜っ」

七瀬「あ、さ、里村さん……前回までとすら全然キャラクタが違ってるような気が……」

茜「ああ、これですか。接客商売なんだからこれくらいの明るさを出した方が良いと浩平がアドバイスしてくれたんです。勿論、恥知らずの乙女じゃないんだからクソ恥ずかしいに決まってます」

七瀬「は、恥知らずな乙女ってもしかして……」

茜「言うまでもないことですが……って、どうしたんですか? 永森さん」

瑞佳「わたし、永森じゃないもん……って、そんなことは別に良いんだよもん」

茜「長森さん……だよもん星人になってますよ」

瑞佳「えっと……あはは、里村さんったら冗談言わないで欲しいんだよもん」

七瀬(ほ、本当にだよもん星人なんじゃないでしょうね)

色付きビームの迸る音がする。

瑞佳「そこ、不穏当な発現は控えるんだよもん」

七瀬「何も喋ってないでしょう。第一、その色付きビームが出る奇妙な形をした銃は何なのよ? 地球外技術じゃない!! EOT(注2)じゃない!!」

瑞佳「黙れ偽乙女、だよもん。それより里村さん」

七瀬「だ、黙れ偽乙女って……瑞佳、あんたも何気に性格歪んでな……」

ヒュン!!

茜の投げたヘラが七瀬の頬を掠めた。

茜「私の科白の邪魔をしないでください……今日は武器も選り取りみどりということを忘れないように」

七瀬「シクシクシク……もう良いわよ、勝手にあんたらだけで話進めて」

茜「それでは困ります。貴方は忠実な重労働担当賃金労働者、兼、この話の汚れ役ですから」

七瀬「あ、あううっ……」

茜「容姿が似てるからと言って別のゲームの真似とは見苦いですね……それで長森さん、前置きが長くなりましたが何の用ですか?」

瑞佳「えっとね……浩平の言ったことは嘘だと思うよ」

茜「……はぁ?」

瑞佳「あそこまでテンパラなくても良いと思うよ。それにほら、あそこで浩平が大爆笑してるし」

浩平「あははははっ、茜……マジでやってる……って、あれ、微妙に冷たい殺気が……」

茜「何か言いたいことはありますか?」

浩平「……ごめんなさい」

茜「他には?」

浩平「なあ……俺のこと、まだ覚えてるか?」

茜「さようなら、本当に好きだった人(大嘘)」

非常に不適切な表現が続くため、一時的に描写を割愛します……御了承下さい。

茜は無慈悲なる夏の女王

--She is a cruel queen of Summer--

瑞佳「でも、大丈夫なの? この界隈を支配する海の家の悪評を知らないことはないんだよね?」

茜「ええ。ライバル店を屈強な用心棒によって潰し、或いは嫌がらせをして富の独占を狙う悪魔のような奴らだということは知っています」

七瀬(私には、二人の方が悪魔に……)

逆さ吊りにして店のモニュメントにされている浩平に目を移す七瀬。

再び色付きのビームが迸る。

瑞佳「私のような可愛い女性に悪魔だなんて……ちょっと失礼だよもん」

七瀬「だあーっ!! 山の形を平気で変形させるような銃を向けないでっ!!」

瑞佳「偽乙女のごきぶり並の生命力なら、例え細胞一つからでも復活出来ると思ったんだよもん」

七瀬「そんな下着の名前を平気で使うような漫画(注3)の悪役みたいな真似、出来るかっ!!」

茜「私もできると思ってました」

七瀬(こいつら……)

澪『で、メニューは何なの?』

七瀬「澪……何時からいたの?」

澪『最初からいたなの、うるうる』

茜「これでヒロイン集合ですね」

七瀬「集合って……繭と先輩がいないわよ」

茜「繭は役に立たないので、縛ってフェレットの籠に閉じ込めておきました」

七瀬(ひ、酷い……鬼だわ)

茜「七瀬さん、貴方も例の鬼の人の料理(注4)を食べさせてあげて良いのですよ?」

七瀬「ごめんなさい、もう不埒なことは思いません……はあっ」

茜「みさき先輩には特殊任務を与えておきました」

瑞佳「特殊任務? それはなんだよもん?」

茜「それはー、企業秘密です」

澪『それ、別のゲームの科白なの』

茜「最近は私が使っても良い(注5)ことになってるようです」

みさき「ただいま〜、茜ちゃんの任務達成だよ〜」

茜「早いですね……お疲れ様です」

七瀬「ねえ、里村さん。口にクリームを付けるような任務って何? まさか早食いコンテストで賞金でも調達してきたんじゃないでしょうね?」

茜「違います。みさき先輩にはライバル店のジュースやアイスといった賞品を食べ尽くして貰いました」

みさき「ざっと150人前ってところかな」

七瀬「平然と言わないでよ、うっ、胃もたれが……」

瑞佳「頭がキーンとか、そんなことは無いの?」

七瀬(私以外、誰も驚いてないし……)

みさき「うーん、よく聞くけど私は一度も無いよ。きっと目が見えないからだね」

七瀬「そんなわけないでしょう!!」

みさき「細かいことは気にしない方が良いよ。で茜ちゃん、次はどうするの?」

茜「作戦第一はつつがなく成功です。そこで作戦第二、浪漫作戦です」

七瀬(何だか微妙に嫌な予感……)

みさき「つまりメイドさんの服を着ていらっしゃいませーってやるのかな?」

茜「それでは某ファミレスゲーム(注6)と同じです。私は二番煎じは好みません。ここは皆さん、今年流行の水着を着て接客して下さい。美少女ゲームのヒロインが水着を着ておで迎え、これでこの海水浴場の浪漫は独占したも同然です」

澪『ちょっと恥ずかしいの』

茜「ここには全ての素材が揃っています。まずは幼児体型担当の澪」

澪『ひどいのひどいの、幼児体型じゃないの』

茜「(無視)そして均整の取れたバランス良い肉体が売りの長森さん、スレンダーさが自慢の私。筋肉質美少女御用達の七瀬さんに……」

七瀬「あたしは筋肉質じゃないわよっ」

茜「最後にグラマラスな体型を保つみさき先輩……最強のオーダです」

瑞佳「成程、繭は澪とキャラが被るから今回監獄行きなんだね」

茜「長森さんは飲み込みが早いですね。では皆さん、検討を祈ります」

七瀬(繭……あんた本当に報われないわ)

 

そして時は流れるままに、太陽が頂点に達し始めた頃……。

七瀬「凄い。向こうの店にはほとんど並んでないのに、こちらだけ大行列……」

澪『どんな技を使ったのですか、姐さん』

七瀬(あねの字が違う……澪だけはまともだと思ってたのに)

茜「幾ら他の料理が良くても、こんな炎天下の中、ジュースやアイスも売ってない店に客が並ぶ筈がありません。そこで改めて下工作です」

みさき「私の胃袋は宇宙なんだよっ」

七瀬(その科白、何処ぞの大食い番組のパク……)

七瀬「ぎゃあ、頭がチリチリぃ!!」

茜(みさき先輩に逆らうなんて、なんて愚かな偽乙女……)

澪『身の程知らずなの、偽乙女』

瑞佳「相手は考えて喧嘩を売った方が良いんだよもん、偽乙女」

七瀬「里村さん……あたし、この話において人権はないのよね……」

茜「ええ(きっぱり)……みさき先輩に頼んだことは敢えて説明するまでもありませんね」

瑞佳「フードファイトのONE版なんだよもん」

茜「残念賞……です」

澪『ヒットマンを使った狡猾な市場操作なの。流石姐さん、目の付け所が違うなの』

茜「澪は飲み込みが早くて良いですね」

みさき「私、飴でも三口で飲み込めるよ〜」

茜「その飲み込みの早さでは……っと、たい焼き五つですね、有り難う御座います」

七瀬「たい焼きって、夏の屋台で売るものなの?」

茜「完全無欠、私の趣味です。無論、この店に来る人はうぐぅのことをよく知っていることも計算済みですが……」

澪『姐さん、一生ついていくなの』

七瀬(ああ、誰かあたしの他に突っ込み役をやってくれる人はいないの?)

悪人A「ちょっと待てや!!」

七瀬「もしかして突っ込み役……って、人相悪そうな奴ら、何時の間に?」

茜(出ましたね、敵の破壊活動が……)

悪人A「このたい焼き、ごきぶりはいっとるやないけぇ」

??「うぐぅ、ボクもう五つ食べちゃったよ」

悪人B「ここではごきぶり入りのたい焼き食わすんか? 責任者、出て来い」

茜「姉さん、他二名の人……出番です、頼みます」

??「あんた、他二名って……」

??「お母さん、天国で見守っていてね……」

??「では……行きます」

悪人A「あんたら三人が責任かあ?」

??「ピースの足りないパズルは飾られることはないのよ」

??「私、お母さんがいたから頑張って来れたの」

??「茜似だなんて言う人は、皆粛清です」

後日店に訪れた人によると、水晶型のものが二人の身体をボロボロにしたということらしいが、真相は闇の中である。その日を境に店ごと消滅したという事実だけが残っている……。

茜「悪は完全に滅びました」

七瀬(私には新たな巨悪が生まれたとしか……)

ガン!!

たい焼き器が七瀬の頭に直撃する。

七瀬「熱痛い〜っ!!」

茜「無駄口叩く暇があったら働いて下さい。貴方はその無尽蔵な体力だけが取り柄なんですから」

七瀬「うるうる……」

 

茜「そして夏休み一杯を使ってしこたま稼いだ日本円を持って、私は例の店に向かいました」

澪『姐さん、誰に向かって言ってるの?』

茜「状況説明です……っと、店長さんあのぬいぐるみを下さい」

店員「ああ、あれなら手を触れずとも動く人形を持った男性(注7)が買って行ったよ……残念だったね」

茜「新参者が……思い知らせてやる必要があるようですね」

 

後日、国崎という男性が半死半生で倒れているのをいつも笑顔を絶やさない少女に拾われたという噂があるが、それはまた別のゲームとして語られる……筈。

Fin


(注1)西高東低は冬で、夏には用いられません……念のため。

(注2)スパロボαに出て来る地球外超技術のことらしい。

(注3)「ギャルのパンティおくれーーっ」は、有名です。

(注4)「愛してるぜ、ベイベー」とか喋るようになる食事です。

(注5)スパイラル〜推理の絆〜を参照のこと。

(注6)Piaキャロットへようこその第二弾だったと思うのですが。

(注7)どうやら九月八日には発売されそうですね、良かった良かった。

 

あとがき

ということで、茜アルバイトシリーズ(最後はアルバイトじゃないですが)はこれでおしまいです。ちなみにタイトルですが「月は無慈悲なる夜の女王」とは何の関係もありません。

結局七瀬は最後まで報われませんでした、合掌。

あと、??で括られている人物ですが月とか華音とかのキャラです……一応までに。

それでは、また別の話でお会いしましょう。

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