「たいへん蒼司くん!」


「う、もうやめてくれ……お兄ちゃんは、お兄ちゃんは死んでしまうから……


「そんなとこで寝ぼけて丸まってる場合じゃないよ! 事件発生なんだから!」





 ”向日葵の花が落ち、山の木の葉も落ちて

 激しい夏の暑さを忘れた季節、常盤村に新たな惨劇が巻き起こる……”




こちら白河探偵事務所
〜常盤村、冬の事件〜





 シーン1 〜事件のはじまり〜



 う、なんか今、人としてギリギリレベルな夢を見ていた気がする……。

 おや、先輩おはようございます。

「昼寝はわたしの特技なのに……」

 まだ朝なんです。まもなく昼ですが。
 寒い家を這い出してようやく暖房のある部屋にありつけた可哀想な人の立場は大切ではないかと。

「だいたいなんでこんな時間に夜、じゃなくて、朝這いしてくるの」

 昨日の深夜、隣が……
「また性懲りもなく、この泥棒猫!」「や、やめろ! とぉ…………ギャーッ!」「許さない、この裏切り者!」
 とか、うるさくて……

「それはまた、深く突っこんだらヤバそうなお話だね」

 それで、バイトでストレス溜まってたらしい妹が怒鳴り込んで、自体が泥沼化しまして。
 部屋に隠れてやり過ごそうとして、気が付けば朝方、寝るに寝られず、ここに逃げてきたんです

「助けてあげようよ、お兄ちゃんが」

 ちなみに、腕にある傷は、止めようとしたときに、妹が投げてきた包丁の刃がかすった痕ですけど。

「あ、そう……」

 だいたい、うちに家に暖房無いのは知ってるでしょう。いくらこの村でも、山側のうちは寒いんです。冷え込む中、またいつ妹に起こされるかと震えるくらいなら、自転車飛ばしてここで寝直したほうが合理的なんです。

「そんなことのために合鍵渡してるんじゃないのに」

 なにを期待してるんですか、なにを。
 とにかく、僕はもう一眠りしたいですから、先輩は適当にくつろいでて下さい。

「押しかけてきた人が言う台詞じゃないよ……。それより、わたしの話聞いてなかったでしょ」

 聞いてましたよ。事件なんですね。
 寒いからまた今度にしましょう。おやすみなさい。

「むー。蒼司くん、ノリ悪いよ……」

 人間の欲の中で最大である睡眠欲の恐ろしさは、先輩がいちばん体現してるじゃないですか。

「そこはかとなく失礼な言い草だね。
 ……萌ちゃんに電話するよ?」

 ごめんなさい許して先輩。

「わかればよろしい♪」




「いったいなんなんですか」

 コーヒー飲みながらの強制起動なんで、テンション上がりません。

「それがねぇ、おどろけビックリ、血みどろーーーな密室殺人事件なんだよ♪」

 殺人事件に「♪」をつけないで下さい。

「で、本当はなんですか」

「む、信じてないね。殺人は違うけど、それ以外は本当なんだから」

「だったらパトカーぐらい来るんじゃないですか? サイレンなんかが鳴ってませんでしたが」

「依頼者は事件を公にすることを恐れ、この白川探偵事務所に、極秘で依頼をしてきたんだよ……」

 いつからここは探偵事務所になったんだろうか。

「で、どこでなにが起こったんです?」

「実は、蒼司君の家の隣だったり」

「え!」

 嗚呼妹よ、君を泣く。とうとう前科持ちに……。兄さんは悲しいぞ。

「蒼司君、違うって。反対側の隣」

 ああ、風間さんのとこですか。

「それは一安心ですね」

 風間先輩には悪いけど。

「でも、だとすると? 少なくとも僕のいる間は、何も隣から変わった音など聞こえてこなかったと記憶していますが」

「貴重な証言1だね。これで、犯人は、蒼司クンが家を逃げ出してから、ここに居座っている間に風間家に入れた人物に絞られたわけです……」

 なぜにカメラ目線。

「僕が悪いと言わんばかりですね」

「それはさて置き、まずは第一発見者、そして事件の依頼者をご紹介〜」

 スルーですか。
 おや、水瀬さん。おはようございます。

「……おはよう」
「私はもちろん小夜の方だから間違えないでよ。あと、さやかよりも一年先輩だってことも、本編の印象からは解りにくいけど、ちゃんと覚えといてよね」

 誰に言ってるんですか、誰に。
 でも、意外と平均年齢高かったんですね、水夏って(禁句)

「さて……」

 ここでモノローグ入れますか。

「わたくし、おてんこひまわり探偵こと、白河さやかは、明朝、彼女から極秘の依頼を受け、現場に急行したのです……」

 なるほど、僕が来た時はそれで家にいなかったわけですか。
 とりあえず、その脱力称号は何とかして下さい。

「あの、どうでもいいんですけど、よく起きれましたね」

「昨日は20時間寝ちゃったから。てへっ」

 多分そんな事だろうと思いました。

「そして、彼女から渡された鍵で入った部屋の中には、血塗れの男性の死体が!」
「これは警察の手におえない難事件だと直感したわたしは、現場をそのまま保存し、助手その1を呼びに事務所へと一次帰還したのです」

 警察か救急車呼びましょうよ。話の真偽はともかく。

「聞くまでも無いですが、助手その1って僕ですか」

「あたりきしゃりきのこんこんちき♪ 本当は電話で呼ぶつもりだったんだけど」

「あたりきしゃりき……いったい先輩何歳ですか」

「……滅殺」

 さやかはせいなるナイフ(美術用 攻撃力+12)をてにとった!

「すみませんもう言いません」

 命は大切にね♪




「それで要約すると、水瀬さんに頼まれて入った風間先輩の家の中で、先輩が倒れていたってことですね」

「あれ? なんで風間くんだってわかったの?」

「あそこの家で『男性』は先輩だけでしょう」

「おおっ。蒼司くん、探偵っぽいよ」

「本当の探偵から苦情が来ますよ」


「あんたたち……。毎度ながら見てて飽きない変人カップルね……」


「ま、とにかく行ってみないと!」

「いつになく元気ですね、先輩。まぁいいですけど……」




 殺人現場でなにが待つのか?!

 次回、驚きの、てか、作者が怒られること必至な提起編突入!


 (ちゅうい:このおはなしにみすてりぃを期待しちゃだめだっ。絶対違うから……)



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