東方紅楼夢へ行ってきた・その1――『信貴山へ参る』

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最初に述べておきますが、紅楼夢本体のレポはその3とその4になる予定です。その2までは前夜祭と考えて下さい。ちなみに同時投稿したので下のほうに行ってしまったのですが、プロローグもありますので併せて読んで頂けると嬉しいです。

東京始発の新幹線に乗り、新大阪への到着は午前8時半でした。ちなみに前日はイベントで興奮して眠れない子供のように睡眠を取ることができなかったので、行きの新幹線はほぼ眠りに費やしました。仕方ないね。

荷物をロッカーに預けると、奈良方面行きの快速に乗り、一路最寄り駅である『信貴山下駅』へ。大和路快速で『王寺』まで行き、近鉄電車に乗り換えて一駅での到着です。

信貴山下駅にて

改札を下りてバスの運行時刻を確認したところ、ほぼ一時間に一本のペースで、しかも次の発車は三十分も先。仕方なく近くのベンチに腰掛け、花と太陽と雨と(以下、FSRと省略)をしながら参拝客の観察を始めました。もしかして自分と同じ種類の人間がいるかもしれないと期待して。

だが現れるのは敬虔そうなお年寄りと、観光目的の家族連ればかり。星蓮船の元ネタになったんだから一人くらいはいるだろうという目論見は見事に外れました。あるいは私が早く来すぎただけかなとも思いつつ、バスに揺られて信貴山・朝護孫子寺へ。

バスの終点から目的地までは徒歩で15分ほどあり、雄々しくもどこかひょうきんそうな虎のタペストリを辿りつつ、ひなびた町並みをゆっくりと歩いていきます。途中、寅まんじゅうという看板が見えたので帰りに訪れてみようと思いつつ、まずは参拝だと最初の門――仁王門をくぐります。案内の通り歩いていくと、最初に本命の一つと言って良い『命蓮塚』への参道がありました。

命蓮といえば信貴山縁起絵巻の主人公であり朝護孫子寺の中興の祖、星蓮船で星に弟様と呼ばれていた人物です。ここは外せないだろうと階段を上ることしばし、寺の外れにひっそりと佇むお墓――命蓮塚を見つけました。聞くところによると塚の近くにある墓碑のどれかが尼公(南無三の御方です)のお墓らしく、だから周りにある墓碑も含めて手を合わせておきました。

下の写真は命蓮塚。逆光が目に痛いのはご勘弁を。

命蓮塚

次は命蓮塚から下りてすぐのところにある剱鎧護法のお堂へ。剱鎧護法というのは信貴山縁起絵巻・延喜加持の巻で帝の夢に出てきた護法童子のこと。命蓮上人は帝快癒の加持祈祷が完了したことを報せるため、この剱鎧護法を遣いとして京まで飛ばしたのでした。剣の蓑を纏い、輪宝を遣う童子――ここで察しが付いた方もいると思いますが、剱鎧護法とは星蓮船3面ボスである雲居一輪の元ネタです。よく一輪のレーザーに対して3ボスの伝統なんて言う人がいますけれど、これは剱鎧護法の剣蓑を現しているのであって、伊達酔狂の代物じゃないのです。

それはさておき、こちらにもなむなむと手を合わせてきました。写真も撮りたいところでしたが、お堂が丁度工事中のためそれは叶いませんでした。

剱鎧護法のお堂に通じる道を戻ると、ほぼ正面にそれは大きな張り子の寅が姿を表します。これこそ朝護孫子寺の有名な世界一福寅です。説明するまでもなく、星蓮船5面ボスである寅丸星のモデルとなったモニュメントです。この寅と、毘沙門様を祀る神社であることを合わせ、だから朝護孫子寺には阪神タイガースの選手やファンが必勝祈願に訪れることもあるそうです。

近くには撮影用の子寅もいて、そちらは家族が写真撮影などもしており、雄々しくもどこか間の抜けた寅の顔つきと相まって、何となく微笑ましい光景でした。

世界一福寅

案内図を参考に寺社内をつらつらと散策することしばし、舞台様として堂々たるお堂が見えてきました。朝護孫子寺の本堂です。入口左手の看板には『本尊毘沙門天王』の文字が、右手の看板には『信貴山朝護孫子寺』とありました。割合に新しいのは、戦後の失火で建て直されているからだそうです。

本堂

本堂になむなむとお参りをしてから本堂をぐるりと見渡し、次に欄干の向こう側に広がる光景に目を向けます。奈良の平野が一望でき、その光景といえば遠い昔、この地に都を建てようとした人たちの気持ちが一手に汲み取れるほどのものでした。正に絶景かな。紅葉づいていれば正しく溜息が出るほどの光景なのでしょうね。

本堂からの遠景

そんなことを考えながら写真をぱちぱちしていると、携帯の操作に困っているおばちゃんたちに声をかけられました。遠景をぱちりと写して欲しいとのことだったので、縦横一枚ずつぱちり。更に風景をバックに撮ってくれと頼まれたので、そちらもぱちり。おばちゃんの携帯は少し型の古いものだったので、上手く収められたかは自信ありませんが、少なくとも当の本人たちは満足そうだったので良しとしました。

さて、お次は本堂の隣にある霊宝館へ。ここでは信貴山縁起絵巻の複製(原本は奈良の国立博物館にあり、従来は非公開。ただし毎年、特定の時期に霊宝館で原本が一巻限定で公開されるほか、特定の美術館に貸し出されることもあるそうです。原本を見たいなら朝護孫子寺のサイト情報を確認して特定の時期に訪れるか、規模の大きな巻物展の情報をチェックすれば良いのでしょう)が展示されています。以前に信貴山縁起絵巻の収められたムックを買ったんですけど、やはり巻物として存在しているものを見てみたかったのです。

霊宝館の中には信貴山縁起絵巻の複製のほか、信貴山由来の品物も展示してあり、仏像や絵画のほかに楠木正成の太刀や兜なども展示してありました。歴史のある場所にしては展示品が少ないのは、戦国時代の後期に信貴山城が爆発炎上したせいじゃないでしょうか。

閑話休題。肝心の信貴山縁起絵巻ですが、同じ紙媒体でも巻物にして眺めてみるとまた違う味わいがありました。この巻物はよく『日本の漫画表現の元祖』と言われるのですが、一つの巻物に物語を収めるため用いられた表現方法(特に場面移動)の巧みさといったら、現代に比べてもそうひけをとるものではありません。流石に絵柄は当代風であるのですが、細やかな風景描写は実に緻密、人物のコミカルな描き方も赴き深く、いつまでも眺めていても飽きの来ないものでありました。流石に国宝となるだけのことはあります。複製とはいえ巻物状の絵巻を見ることができたのは、大変な収穫でありました。

大きな満足とともに霊宝館を後にし、次に向かうは多宝塔。この塔は見れば分かると思いますが、寅丸さんがなくした宝塔のモデルとなっています。こんなにはっきりとして目立つものをなくすなんて、寅丸さんは本当にうっかりさんですね、ハハハ。

多宝塔

ここまで見終わったところで割と時間が余っていたので、空鉢護法のお堂へ向かいました。看板の説明によると剱鎧護法と共に毘沙門様の護法であると分かったので、ここも参っておこうと考えたのです。

結論からいうとこの階段がかなり辛かったです。空鉢護法を模した蛇状の参道は目測よりも長く険しいもので、日頃の運動不足も祟ったのでしょうが、頂上に着いたときには息も絶え絶えでした。わあい情けなあい。

息を整えてから空鉢護法をお参りし、最後に頂きからの遠景をぐるりと。こちらもなかなかの絶景でした。苦労した分、その光景はより色鮮やかに見えたような気がします。

空鉢護法からの遠景

下りてみると時間が割と切羽詰まっていたので、奥の院は諦めて残りの施設をぐるりと。大半は宿坊だったのでほぼ通り過ぎるくらいだったのですが、二つほど目を引くものをみつけました。

一つめは日本一大地蔵尊の前にあった絵馬掛けです。

痛絵馬がありました。なかなかに可愛い白蓮さんです。H21.9.29と書いてありますので、紅楼夢組の参拝ではないよう。関西在住なのでしょうか、調べてみたけれど該当するものが見当たりませんでした。絵馬にこのような絵をさらっと描いてしまえるなら相応の実力を持たれた方だとは思うのですけれど如何に。

(2009.10.14 追記)痛絵馬の絵師ですが、pixivで調べていたら見つかりました。ただし絵師本人ではなく、その方の転用許可(イメレス)の絵を元に、別の方が絵馬に絵を起こしたようです。気になる方がいましたら『聖白蓮』でタグ検索をして何ページか捲ってみれば見つかると思うので、そこからイメレス元を参照してください。

ちなみに私は節度を守った絵柄ならば、こういった絵馬も良いと考えています。溢れるくらいになると流石に問題なので、他の絵馬の飾り具合を見て、個人の判断で調整するのが良いのかなと。難しいところですけどね。

痛絵馬さん

二つめは帰路で発見した聖徳太子像です。聖徳太子と言えば豊聡耳然り、十七条憲法然り、文に秀でたエピソードや業績の強い印象を受けますが、朝護孫子寺は物部氏との戦いにおける必勝祈願と毘沙門天王の降臨に由来する寺であり、故にいでたちを武に固めた聖徳太子が祀られているのです。そのことは知識として頭に入っていたものの、やはり実物を目にするとびっくりするところがありました。

勇ましい聖徳太子

そのようなものを目にとめつつも、時間が来たので名残惜しくも朝護孫子寺を後にしました。最後に目を付けておいた『寅まんじゅう』の幟が立った土産屋に入り、寅の形をした姿焼きを三箱購入。ばらでも売ってくれるとのことだったので、帰りのバス待ち用にと三つほど購入して食べました。あつあつほくほくのまんじゅうは非常においしゅうございました。宣伝というわけではないですが、甘いもの好きなら食べてみて損はない味だと思います。

以上が信貴山参りの大まかなところです。朝11時に到着、14時7分のバスで帰ったのでのべ三時間ほどいたことになります。電車やバスでの移動時間も含めると、ほぼ半日を費やしたことに。私は信貴山下駅からバスに乗ったのですが、上下共に本数が非常に少ないので、帰りのバス時間は前もってチェックしておいたほうが良いと思われます。行きは人数がいればタクシーを使っても良いかもしれませんね。

(2009-10-14 追記:信貴山への交通ですが、信貴山口駅からケーブルカーに乗るルートもあるそうです。こちらについては『D.B.E遊撃隊』というサイトの参拝レポートを参考にすると良いです。私のところなどより何倍も面白い参拝レポートですよ)

朝護孫子寺の情報については公式サイトが良くできており参考になります。参拝前に目を通し、できれば一式プリントアウトして持ち歩きたいところです。

そして当然のことですが、東方関連のネタでわいわいがやがやして周囲に迷惑をかけるのは厳禁です。絶対にやっちゃ駄目だぞ。あくまでも敬虔な気持ちで、ゆっくりと寺社の雰囲気を噛みしめながら回って下さい。関係者への感謝も忘れないように。

それにしても……素晴らしい所ではあったのですが、何かと俗っぽさが目につくところだけは何とかならないかなと思いました。悪いとは言わないんですけど、節操なく色々な神様を祀りすぎ、賽銭箱も置きすぎなのです。本当、悪いとは言わないんですけど。強欲の山崎長者を懲らしめた命蓮上人を中興の祖とする寺なのだから、もう少し慎ましさを示してみても良い気がしました。

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