ここ数年――もしかしたらそれ以前にも存在したのかもしれませんが、少なくとも私が見かけるようになったのはそれくらい前からなので、便宜的に数年前としておきます。
その数年前から、秋葉原のオタク系書店――アニメイトとかとらのあなとかそういうところ――で時々、うっとい客を見かけるようになりました。
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その客の挙動を説明すると、以下の通りです。
まず、新刊の平積みになっている本を一掴みに取り上げます。もちろん全てが同じタイトル、巻数の本です。
次に背の部分を上下左右から仔細にチェックしていきます。何故か表紙や裏表紙は一冊ずつチェックしている様子がないのが不思議です。
もし棚の底の分までチェックしていたならば、その中から一冊だけ取り、他はぞんざいに置いてその場を立ち去ります。
まだチェックしていないものがある場合、既にチェックした本を取りあえず横に置き――その際、平積みになっている別の本の上に載せるというマナーの悪さをさりげなく披露する場合もあります――残りの本をチェックしていきます。そうして全てのチェックが終わったら、一冊だけ取ってその場を後にします。
目当ての本が複数冊あれば、購入分だけ同じルーティンを繰り返していきます。
後ろで同じ本を買いたがっている人や、周りの区画を見て回りたいと願っている人を省みるようなことは一切ありません。
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正直、凄い、邪魔なんですよね。
少しでも良い状態のものを選びたいという気持ちは分かるんですけど、書物なんて持ち運びしたりページをめくったりするだけでも痛むものですし、だから書店員がきちんと並べた書物の中からほんの少しの差異を見出す作業なんて、無駄の一語でしかないわけです。
そのために店の流れを数分も阻害し、商品全てに指紋をべたべたつけて、乱した棚を整えもせずに去っていくその振る舞いは、特に店が混雑している週末時など、うっといとしか言いようがないわけです。
せめてもう少し頻繁に、辺りに気を配れないのかと思うのでした。