例大祭・無料配布ペーパーの内容を公開しました

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5/8に開かれた例大祭で「静止する風の少女」を補足する文章を掲載したペーパーを配布しました。内容的に次以降のイベントで配布する予定がないので、Webにて公開します。

SSは特設サイトの『小咄5』として、あとがき代わりのあやさな語りは、当トピックの以下に載せます。更に、本編後を描いた掌編を『小咄6』として公開しております。短い内容ですが、未読の方には楽しんで頂けると幸いです。

それでは「後記、あるいはあやさなについて」をどうぞ。

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 射命丸文と東風谷早苗が東方風神録の四面ボスと五面ボスであることは改めて語るまでもないように思えます。ただしあやさなについて語るときは、このことを念頭に置かずにはいられません。

 二人の作品における位置は非常に近く、所以は違えど風の力を操るという共通項があります。作品後も二人の住む場所は決して遠くなく、エンディングから互いに行き来が発生することも容易に想像できます。このような条件にも関わらず文と早苗をメインとした創作を見つけることはとても難しいのが現状です。

 二人の関係が描かれ難いのはどうしてなのでしょうか。ここでわたしは一つの理由を提示できるような気がします。
文は妖怪の山を敷衍する天狗の文明、早苗は旧くより祀られて来た守矢の二柱に属しています。この二つは、それぞれが独特の思想や理念を持っており、風神録の本編後で融和が果たされたにも関わらず、その隔たりは完全には解消されていません。どちらかといえば、適切な距離を保つ形に落ち着いています。物理的には近いけれど、それ以外のあらゆる意味で遠い。それが文と早苗の関係を描く上での難しさではないかと思います。

 加えて文には同じ種族である椛やはたてがおり、原作の中でも某アニメ風に言うならば『仲良く喧嘩しな』という、ネタにしやすい状況を保っています。早苗のほうも守矢の二柱と早苗の仲がまるで家族のように良好で、他からの介入を必要としないような描写が、後の作品でいくつもでてきます。

 ただし、これらの理由だけならば、東方には接点がないにも関わらず、親しく行動している組み合わせがいくらでもあります。例えば同じ風神録で、二面ボスの鍵山雛と三面ボスの河城にとりは純粋に面が隣接しているという共通項しかないにも関わらず、二人の組み合わせは昔から小説、イラストを問わずに相当の数が公開されています。

 体験版という完結した環境の中で、組み合わせる相手を探した結果というのがその端緒だと思います。ただ、そういった関係は製品版で更新された情報とともに立ち消えてしまうこともあるのですが、今でも活発に創作が行われているのは、二人を組み合わせてみたいと思わせるような背景を有しているからだとわたしは考えています。

 もう少し具体的に述べるなら、雛とにとりはその根こそ異なるものの臆病という共通項があります。二人の話が得てして恋愛ものに傾きやすいのは、臆病者同士の恋は主に近代から現代において、多くの人をひきつける主題であるからなのかもしれません。

 これはもちろんながら私見であり、各々が異なるにとひな感を持っていると思います。ここで強調したいのは、二人を結びつけたくなる引力のようなものが存在するのでは、ということです。そしてその点ではあやさなも負けてはいないと思うのです。

 先にも述べたとおり、文と早苗はともに風の少女であり、少なからぬ行き来の発生する可能性が原作で示唆されています。二人に交流があることは星蓮船のエキストラステージにおいて、早苗が異星人……と思い込んでいる未確認飛行少女の撮影を依頼しに行こうとしているところからも見て取れます。

 実際のところ、早苗は『記念撮影を天狗に依頼する』と言っているだけであり、その天狗は別の誰かかもしれません。文だとしても、二柱の機嫌を取りたいだけかもしれません。もしかしたら二人は仲良く顔を合わせているのかもしれません。仮にそうだとしたら、二人はどのように会話するのでしょうか。

 取材相手ではないのだから、ざっくばらんとした口調なのかもしれません。最初は丁寧だった口調が、親しくなったことを境に変わったのかもしれません。あるいは親しいことを天狗心に認められず、わざとらしい敬語を貫いているのかもしれません。そのことを一人になったとき、うだうだと悔やんでいたりしたら、素敵だとは思いませんか?

 わたしは思うのですけれど、残念ながらあやさなで描く人は今もって少数であることも事実です。一度とっかかりがつかめさえすれば、大きな可能性が潜んでいることに気付いてもらえるはずだと思いながら、これまで大きな行動が取れずにいました。

 今回『静止する風の少女』を書いた大きな理由の一つとして、本著がそのとっかかりになって欲しいという願いがあります。特に二人が近しい存在であることを、作品を通じて知ってもらいたいがため、二人の出会いから始まり、原作をかなり大幅に再構築しました。まるで別物という形にはしていませんが、違和感を覚えた方も多いと思います。また原作情報に依らない一からの描写が必要なところも多々あり、それゆえに新書二段組七八〇ページという大分量となりました。ただし、二人の関係はifものだから描けるものというものでは決してありません。原作準拠の世界観においても二人は同じように友誼を深め、あるいは恋に落ちるかもしれません。

 もし本著を読んであやさなに興味を持たれた方がいましたら、本著のイラストを担当して頂いたささかめさんが、pixivに掲載した漫画やイラストをご覧になってください。時系列に昇順で読んでいくとあら不思議、最新の作品を見終えたときにはあやさなを気にせずにはいられなくなるでしょう。同じような、または各々にあった創作をしたくなるかもしれません。その全てをあやさなという組み合わせは受け止めてくれるでしょう。幻想郷が全てを受け入れるように。

 願わくばあなたの幻想郷に素敵なあやさながありますように。

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