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本屋を色々と探してもなかなか見つからなくて(仮面の男さんは滅多なことがない限りAmazonは使わない主義です、何故なら本で身を滅ぼしかねないからです)、先日辻村深月のサイン会で丸善へ行ったとき置いてあったので状態は少し悪かったけれど確保してしまいました。
遺伝子操作によって作られた種族というテーマは目新しいといえば決してそうではないのだけれど、四本手の人間(作中ではクァーディと呼ばれている。無重力なので足が必要ないという考え方はとてもジオニック的)の開発理由から、人間の行動や思想からやがて半独自のコミュニティを築いていくまでが細かく描写されていて、こういう言い方をすると悪趣味かもしれないけど彼らの生態は興味深く楽しく読めました。
物語的には困難あり、突破あり、希望ありの、由緒正しく少し古臭さを感じさせるくらいの正統派SF的ですが、類稀なストーリィテリングと作者一流のユーモアがため、徹頭徹尾読む手を離させぬ良いエンタテイメントとなっています。伏線付けは多少露骨で唐突なものもあったのですけれど、ミステリ的な要素は薄いので問題はないかなという範囲。
吾妻ひでおがべた褒めしていたからどうなのかなと思っていたのだけれど、確かにこれは素晴らしいSFでした。特に往年からの、ハインラインがSF読みの原点ですという人には楽しめる内容です。もっともそういう人は粗方、本作には手をつけていそうですが。
以下、少しだけネタバレ。
終わりが綺麗だから騙されそうになるけれど、主人公はどうみてもロリコンです、本当にありがとうございました。
解説がハインラインと比べているのも、作風が似てるということが根底にはあるにしろ、やはり『夏への扉』のラストを『自由軌道』のラストに重ねてしまったというのが大きいと思います。