『M.G.H.―楽園の鏡像』[三雲岳斗/徳間デュアル文庫]

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最近、とみに三雲岳斗が気になりだしたので、ふとこいつを積んでいたことを思い出し、読んでみました。


宇宙ステーションで起きた殺人ということでもっと一発ネタっぽい方向かと思っていたのだけれど、舞台設定や人間関係の前振りをきちんとやった後での、驚くほどにフェアでかっきりとしたミステリと謎解きが構築されていて、非常に素敵な内容でした。奇想を奇想で終わらせない細緻さは、かのホーガンのSFミステリーシリーズを思わせるほど。もっともピンと来る人は、あらすじを読んだだけで大体どんなことが起きるのか想像できたりもするのですが……それを差し引いても正統派ゆえの論理性を十分に楽しむことが出来ました。


キャラクタも主人公の二人を始め、アクの強い人物をきっちりと配置してあって、頭の良さを単なる単語ではない、行動や論理に落とし込んでいて、機微のある会話が色々な意味でおかしいんですね。特に序盤の、宇宙船内での会話が素敵。


もう少しぶっちゃけると、森博嗣の失った森博嗣が読める(笑)と言っても良いかもしれません。S&Mの初期五作が好きならば、その荒々しさも含んだシャープさを存分に楽しめると思います。もちろん普通に奇の衒ったミステリや物語が好きならば、手に取ってみて損はないはずです。

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