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先日さんざん述べましたが、アラーキー絵のせいでノーベル賞作家の作品が、シュールなお笑いとしてしか読むことができませんでした。いちいちあの絵柄の少女と、激しい擬音が脳内で再生されるのですよ、どうすれば良いというのか。
しかしそれだけではあまりに悲しいので真面目にも述べる。
少なくとも『伊豆の踊子』に収録されていた五篇に限った話ではありますが、少女から大人への脱皮(あるいはその暗示)を描くことに執を滾らせる作家だなと思いました。あるいはその二点間のボーダーに拘りがあるのか。特に死体紹介人における偏執具合はおかしい。
年にそぐわぬ頑なさを持つ女性が解剖という蹂躙を受け、冷たく真っ白な身体を解剖台に横たえることによって華開くという描写ですよ。異質にも程があり、また変態にも程があるわと言いたくなりましたが、倒錯心理好きな仮面の男さんにとっては一番ぞわぞわと総毛だった場面でした。
これで死体の姿を徐倫そっくりに思い浮かべなければなあ……。