『忘れないと誓ったぼくがいた』[平山瑞穂/新潮文庫]

Misskey Mastodon

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本の裏側に書かれているあらすじを見て、思い当たる節がありすぎたのですが、しかしラス・マンチャス通信のような歪みを書く作家が、まさかなあと思い、読み始めました。

すごく、西園美魚シナリオでした……。非日常が浸食していくどこか気味の悪い様は、ラス・マンチャス通信の面影があったのですが、あちらとはほぼ完全に別物でした。

こちらのほうが発表的に早いですし、女性の描写がそちら系ではなかったので、お互いがお互いを知っているとは思えないんですが。特に忘却の過程、懊悩の様など既視感を覚えるほどでした。そして結論が『忘却の否定』であることも一緒。

ただ、美魚シナリオがあくまでも日常の肯定――だから、迷い込んだ特別から戻ってくることが『正解』なのですね――であるのに対し、本作は日常の指針――失われようとも大事にすべき一生のものとして描かれます。そういう意味では本作のほうが前向きなのかもしれません。

もちろん、どちらが正しいのかとは一概に言えないのですけれど。歯の立ちそうにない現実に立ち向かい、ぎりぎりまで耐え凌いで大事なものを留めようとする主人公の直向きさには、やるせなさと胸苦しさを覚えます。

不満があるとすれば、もう少し主人公とヒロインの仲が深まっていくさまを、事実が明らかになる前にもう少し厚く描いて欲しかったかも。分かってます、エロゲ脳ですよね、すいません。

もし上の紹介を見て興味を持ったら、読んでみると良いですよ。できればラス・マンチャス通信も一緒に。

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