仮面の男さんは先々週、ちょっくら果物っぽい名前の店や、猛獣っぽい名前の店に行って来たのですけれど、同人ゲームのコーナを巡りながら、東方には鞠男ライクや岩男ライクな同人ゲームがあるけれど、どこかローグライク作ってないかなと、こそり思ったのでした。
結論から言うとありました。『椛と不思議の洞窟』というタイトルで、タイトルの通り、白狼天狗の娘さんが入るたびに地形の変わる怪しい洞窟に一人挑む――正にローグライクといわずして況やといったゲームです。
有志作成のようですが、プレイしてみるとなかなか歯応えがあって面白いです。十回ほどやってみましたが、仮面の男さんはまだ最下層まで一度も辿り着いていません。裏白蛇クリアできたんだから余裕だろうなと思った自分が甘かったようです。というか最初の数回は符の発動と符を貼るの区別がついていませんでした。
マニュアルなどによると、これはサクセスより発売中の『降魔霊符伝イヅナ』というゲームのシステムとのこと。このゲームでは符を『使用して効果発動』『武器防具に貼って特殊能力付加』の二種類の用途で使うことができるらしく、椛――でもそれを踏襲しているよう。
ようやく符のシステムが分かってきたんで、もう少し試行錯誤すれば何とかなると思うのですが、システム変わるだけでテンパるなどと、まだ風来人として足りない部分も少なからずありそうです。
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以下、おまけ。なんで椛は洞窟に潜るん？ 書けば良いじゃない？ みたいなやり取りがどこかであったので、プロローグっぽいものを書いてみました。
私はボスが誰かは知っていて、だからプロローグに対応するエピローグっぽいものも考えているのだけれど、それは打開してからということで。そのための布石、というか伏線は色々と貼っているのですが、多分シリーズを一通りプレイしていれば、何となくピンと来るところもあるでしょう。
犬走椛が天狗の滝の警備と称していつものように将棋の新手を考えていると突然、目つきの鋭い意地悪そうな烏が、その盤面の上に容赦なく止まった。もう少しで閃きかけていた新しい定石が、正に雲散霧消といった按配で、椛は辺りの野鳥が飛び立っていくほどの大声をあげた。
「あっ、この……なんてことをするでありますかっ！」
椛はついかっとなり、烏に剣を振りかざしたが、しかしそいつは寸でのところで攻撃をひらひらと避け、まるで馬鹿にするような堂々とした仕草で、再び盤面の上に羽根を置いた。椛がいよいよ威嚇するような唸り声を上げると、そこでようやくその烏の脚に赤い布が括りつけられているのだと分かった。するとまがりなりにも天狗の一隊を仕切る長である。その意味にすぐ気付き、表情を改めた。それは天狗の間で、内々のうちに上役のもとへ出頭の意味を成す。つまりごく内輪で物事を治めなければならないことがあり、その任務に自分が命ぜられたということだ。
そして目下のところ、椛の頭には一つの可能性しか思い浮かばなかった。
「つまるところ、諏訪の神様関連でありますかねえ……」
ことの始まりは数ヶ月ほど前、天狗の根城とする妖怪の山に、新しくも騒がしい神様たちが引っ越してきた。彼女たちは控えめにいって、この辺りの勢力図を丸ごと書き換えてしまうほどに力の強いものたちであり、そのため、まるで曙光に惹かれる羽虫の如く、様子見と称して集まってきた妖怪たちで、山は俄かに騒がしくなった。
ある程度の道理を弁えたものならば、弾幕にしてもどんちゃん騒ぎにしてもさして問題はない。厄介なのは、神様の気に惹かれてきた道理を知らぬ、暴れものどもである。そのような輩を穏便に処理するため、情勢がすっかり安定するまでの数ヶ月間、椛を始め滝の警備隊は結成されて初めてと言わんばかりの忙殺さ加減であった。
もちろん彼女たちは全て八面六臂の能力を持つ天狗たちであり、ちぎっては投げ、ちぎっては投げと全てを迅速に対処した。しかしいかな天狗とはいえ、いや無双の力を誇る天狗ゆえ、彼らをいなすには怖ろしいまでの手加減が必要だった。そして意図的に手を抜くほど、疲労の溜まることはない。
常にものを上から見、睥睨することに慣れきった天狗の中には、精神の参ってしまうものまで出る始末。椛の隊でも怖ろしいまでの厭戦気分が充満し、爆発する一歩手前であったのだ。幸い、特異点に達する前に事態は俄かに沈静化し、辺りの気が乱れてたまに路頭に迷う野良が出るほかは何もなく、警備隊の仕事も日常へと戻っていったのだ。
「今回もまた、野良でありましょうか……しかして赤布の報せとなればもう少し手強い相手なのかもしれません」
しかしどちらにしろ、露払いであることは間違いないだろう。そう結論すると椛は溜息一つ、お預けを食らった犬のようにしんなりとした調子で、目的地へ向けて空を駆ける。
「犬走椛、徴を受けて参上致しました」
しゃっきりとした椛の挨拶に、上役の天狗はご苦労と言わんばかり、重々しく頷く。その表情には隠しきれないほどの苦さが含まれていた。
「ふむ、ご苦労。ここ最近、色々忙しいというのに内々に呼び出してしまって、すまないね」
「はあ……」いつもならもっと威張っているはずである上役のまるで覇気のない様子に、椛は戸惑いの呟き一つ漏らす。「それでこの度は一体、どのような用件でありますか？」
「そうだな、話せば長くなるのだが……犬走くん、君は天狗の氷室のことは当然、存じているのだろうね」
椛はこくりと頷く。天狗の氷室というのは、氷を貯蔵するために使われている小型の鍾乳洞のことだ。冬の間、雪山やら湖やら様々な箇所から運ばれてくる氷はその洞窟に集められ、主に夏季、天狗たちに涼を提供する。
「もしかして氷室に野良妖怪の群れでも住み着いたのでありますか？」
「あ、うむ、そうだな……半分はそういうことなのかもしれん」
どことなくすっきりとしない上役の物言いに、椛は首を傾げる。
「というと、妖怪だけではない……もっと性質の悪いものが？」
しかしその質問にもやはり、答えは芳しくない。それから、上役の天狗はのっそりと口を開いた。
「それが、わたしたちにも何が起きているかははっきりと分からなくてな。ただ一つだけ言えるのは、氷室の入口が全く別の空間に繋がってしまったということなのだ」
「別の空間、ですか？ それはもしかして、諏訪の神様が元いた日本という場所のことでありますか？」
「わたしも最初はそう思い、大天狗様の面々にもお伺いを立てた。そして命により、天狗の小隊をそこに向かわせたのだ。何があるか知れぬから、装備も食糧も念入りに整えてだ。しかし誰一人、そこから無事には戻ってこられなかった」
淡々とした物言いが、沈黙とともに冷たく、椛の胸に染みる。それからおそるおそる、椛は訊ねた。
「すると、その方たちは全員、討ち死にされたのでありましょうか？」
「いや、そうではない。彼らは装備品を全て奪い取られただけで、手傷は全く負っていなかったのだ」
いよいよもって、椛には訳が分からなくなっていた。頭の中は疑問符が一杯で、今すぐにでも目の前の上役を問い詰めたい衝動に駆られる。
「そしてこれが最も奇妙なのだが、氷室からその別空間に突入した天狗たちは、何故かそれぞれ別個にされ、風景こそそっくりなものの全く形の異なる空間へとはじき出されたというのだ。そこでは、妖怪はおろか最近この山を賑やかしていた人間たちまでもが当然のようにうろついており、襲い掛かってきた――というのが、彼らの口を揃えた報告だった」
人間たち――となればその中には、自分を小手先をあしらうかのようにあっさり撃墜していったあの巫女も含まれているのだろうか。椛はそんなことを考え、俄かにぞっとするものを感じた。
「彼らは不可思議を覚えながら、氷室の奥に辿り着こうと何度も洞窟に挑んでいった。しかしその奥は深く、敵は強い。このままでは埒があかぬと考え、洞窟の中で垣間見た事実を伝えにここへと戻ってきた。それらを元に人選を再考し、その結果、君が選ばれたというわけだ」
まるでそれがさも当然であるかのように述べられ、椛は慌てて言を返す。
「そのような大任を与えて下さるのは嬉しいであります。しかし……所詮のところ小生は若輩。職務を厭う気持ちはありませんが、わたしよりも任務に適したものはいくらでもいるのではないでしょうか？」
臆したわけではない。しかし話を聞く限り、自分のような若輩にお鉢の回ってくるような任務ではない。相手もそれは分
