Livedoor Blogの管理画面にログインすると、他のブログから注目記事や高アクセス記事が抜粋されて一覧化されており、何度かここでも紹介したことがあります。
で、ミステリ好きと名乗っている仮面の男さんとしては見過ごせない記事がありました。
私が見た限り、コメントから上までだと島田壮司の某斜め屋敷以外のネタバレはなかったように思います。コメントより下は保証しませんが。あと、夏と冬の奏鳴曲の雪密室殺人やれば良いのに発言にわぴこ噴いた。
でもまあ、マジレスすると、殺人犯が巧緻を用いた犯罪を実行しない一番の理由は精神面にあるんじゃないかと思っています。
幼い頃から割と冥い感情に苛まれがちだった仮面の男さんでありますが、冷静にちろちろと長い間、誰かを酷く憎み続けるというのは、実はそれだけで相当に辛いものがあります。
実際には数ヶ月ですら維持することは難しく、数年も経つとふとしたきっかけで殺意までに煮詰められた情動は薄れ、あるいは疲れてその気力が失われてしまいます。よく金田一などで十年来の復讐とかでてきますけれど、よくそんなに殺意の濃さを維持できるものだと、溜息すら出てしまうことがあります。
殺意の情動と、冷静な計画というものががっぷり四つを組むことは非常に少ないのです。だからミステリ顔負けの連続殺人は、おそらく現実では滅多に起こらないでしょう。
もちろん、それらの平衡を凌駕した殺人者が生まれることを否定はしません。しかしそうしたものの行う犯罪は『そもそも発覚しない』ことを前提としたものとなるはずです。クリスティも作中で述べていますが、発覚しない犯罪こそが最善の犯罪だからです。
あるいはもっと目立つ形で事件が起きる場合もあるのかもしれませんが、もしそのような犯行を行うものがいたとして、まるで本格推理小説といった事件が明るみになった事実というのは、寡聞にして聞いたことがありません。
このことから分かる悲しい結論とはつまり、もしこの世に巧緻に長けた犯罪があったとして、名犯人の企みを暴く名探偵はいない、ということです。
そもそも巧緻の犯罪など起きていないとなれば世はおしなべて平和なのですが、しかしそうでなければ……二重の意味で悲しい気がします。
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