二月に入ってしまいましたが、一月に読んだ本の感想をそろそろと。
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レイ・ブラッドベリ強化月間というわけではないのですが、つい手が述べてしまったのでした。
短い話の中に人間関係の機微や怖気のようなものを切り取って魅せるやり方は『二人がここにいる不思議』と共通しており、良い短編が揃っています。『二人~』アイデアよりも機微の傾向が強くなっているのは、作者が年を経てからの作品が多いからなのでしょうか。
特に気に入ったのは『ローレル・アンド・ハーディ アルファ・ケンタウリさよならツアー』『タンジェリーン』『微笑みは夏のように大きく』辺り。ただし最後のやつは中身よりも寧ろ、題名で八割方ノックアウトされただけかもしれません。いやだって、ものっそいずるい題名ですよね。こんな綺麗で想像的な題名をつけられたら、題名好きな仮面の男さんとしてはよろめかずにいられません。
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ミステリ好きを自認していながら全く読んでいなかったルブラン作品なのですが、新装版が文庫落ちしていたので良い機会だと買って読んでみたのでした。
流石に子供の頃のわくわくってところまではいかないにしても、この年で読んでも十分に面白い。探偵と犯人が同じという特殊な構造を利用して、手を替え品を替え幻惑的な展開を仕込んでくる辺りの手並みが実に上手いのです。
あと、同世代の人気探偵を堂々と自作に取り込んでくる辺りが、何気に凄いというかいいのかこれ! と思った。まだ著作権などなどが緩い時代だったからこそ許されたのか、仏国の作品だからこそ許されたのか。緩やかな時代だったのでしょうね、良くも悪くも。
それにしても、最後の最後で美しい女性に弱いところまで継いじゃったのね、三世はw
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容疑者xの映画が話題に上がっていたとき、これを読めばお前らの本気が分かるというつぶやきがあったので、興味を持って読んでみました。
非コミュの主人公が実に消極的な手段で愛する女性に近づいていく辺り、確かにおまえら臭を強く感じられるのですが、話の筋としては『隣の家の少女』に近かったです。主人公が基本的に気弱な傍観者であり、DVを指をくわえて見過ごしたまま話が進んでいくからでしょう。引きつけられるけど読んでて非常に胃の痛くなる作品でもありました。面白いんですけどそういった描写に弱い人は避けたほうが良いかもしれません。角川ホラー文庫の黒い表紙なので忠告する必要もないかもしれませんが。
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ゆえあって資料半分、物語興味半分で手に取ったんですけど、これが非常に面白かった。
所謂原作版というやつなのですが、アニメや子供向け絵本で読んだのと結構内容が違います。風刺色が強く、主人公も決して可愛くなく怠け者のだらしない性格から徐々に成長していく話となっています。少なくとも優しい話ではありませんでした。今の時代にも通じる説話が多く、百年経った今でも通じるものがそこかしかにちりばめられており、そこが一番読んでいて凄いなと感じました。教訓物語としての強度が非常に高い。人が貧富に分かたれている間は、この説話は多くの人に読み継がれ数多の共感を得ていくのだと思います。
と、こんな分析が浮かぶ前、あどけない子供のうちにこの本は読みたかったですね。多かれ少なかれ児童文学作品を読むとそんな気持ちに駆られるのですが、本作は特にその思いが強かったです。