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以前から読もうと思っていた古典作品ですが、新装版になったということでジョウント(注:虎よ!虎よ!に出てくるテレポーテーションの一種)よりも早く手を伸ばしてみました。
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どうしてこの年代のSF作家は、物語や主人公、話の筋や伏線といったものを犠牲にしてまで、こうも奇想ばかりを盛り込めるのだろう……と改めて思わされるてんこもり加減が、しかしとても魅力的な作品でした。
正直にいって主人公は酸素欠乏の逆恨み人間であり、感情移入できるところの一切ない人物でありますが、しかしその復讐譚の強烈さ、その合間に度々差し挟まれる未来像のおかしさがあい絡まり、一度読み始めるとその世界に惹き付けられます。特に後半、革新したジョウントの見せる感覚と時空描写は凄まじいの一言。
流石に記された時代も古く、SFが時間とともに魅力の失われていくジャンルであることを差し引いても私は傑作だとは思えないのですが、1950年代に、ここまでの未来に対する破天荒な内容が記されたということに感嘆するためだけでも、この本を読む価値は十二分にあると思います。