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前作のバニラが社会の病理と百合と銃と百合と少女と百合を描いた素敵な物語だったので、新作を出したとなれば買わざるを得なかったわけです。で、さらりと読み終えたのですけどね。
馬鹿じゃないの、この作者?
と、主に褒め言葉的な意味でですね、仮面の男さんの頭の中にはそういう言葉がすーっと流れていきました。何しろ前二作である程度作風を固定させたように見えた作者が、描写能力の手筈手管を存分に用いてゼウスガーデン衰亡史(ゼウスガーデンという架空の巨大テーマパークを巡る一族の歴史を描いた傑作)的な半額弁当争奪偽史を描いているのですから。笑うしかないよね。
序盤はルールも分からぬまま空転する様がちとくど過ぎで読んでいて苛々するのですが、そこを超えれば多分、半額弁当を入手するために日々研鑽を続けるものたちのいちいちな暑苦しさや、他者を犬豚扱いしてやまない透徹とした美学感を、楽しめることができると思います。
ただ、主人公が訳の分からん事情でいきなり最強的な流れはちと頂けなかった。あれだけ往年のジャンプ的な努力友情勝利的空気を作り出したというのだから、もう少し色々な意味で強くなっていく過程を見たかった気がします。最近の子(あくまでライトノベルは中高生メインという前提で発言するのですが)はそういうのを好かないのかなあ。
あと槍水先輩はヒロインだというのに基本的、空気ですよね。極端な自己嫌悪を発動してやまない腐娘の白粉さんや、ノンセクシャルヴァイオレンスな百合娘の白梅さんのほうが余程、頑張ってたような気がしてなりません。好きなキャラではあるので次巻があるならばもっと頑張ってほしいと期待するのでありました。