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DHCのCMばりにランクインがずらりと並んだ帯を見て多少の胡散臭さを感じながらも手に取り、読んでみたのですが。
なんだこれ……面白過ぎるだろ……。
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不穏な出来事を暗示させる冒頭から始まり、歪さを肌に感じながら幸せに流れていく子供時代、様々にして不可解なイニシエーション――この辺りまでは遠未来の風景を見せるためか多少緩やかに進んでいくのですが、ある出来事で世界の仕組みが徐々に判明しだしてからはもう繰るページが止まらない。明かされては影に入り、そこから不吉な『魔』や『鬼』として現れてくる真実、そして――。
ここから先はどう語っても興を削ぐので省くのですが、大展開の大転回の連続。未だもって不穏が続くことを示唆し、しかし僅かな希望を感じさせる静寂としたラストまで、1000ページ超の話をがりっと読み干してしまいました。読む手が止まらないとは正にこのこと。
テーマとしては超能力という強大なを手に入れた人間、およびその業というオーソドックスなものなのですが、設定と語り方次第ではいくらでも展開しようがあるのだなと。オーソドックス舐めたらいかんということをつくづく感じた一作でもありました。絶チルの方法論に近いのですけれど、あれを十倍くらい酷くした世界観――といえば分厚い本に気圧されている人も少しは興味を持ってくれるかしら。
SFという括りに入っていますけれど、心内を抉るようなホラー描写も満載、青の炎みたく青春ものとしても楽しめる、作者の新境地でありながら集大成で――とかそんな帯に出てくるような文句なんかどうでも良い。めくるめくビジョンと卓抜したストーリィテリングの両方が楽しめる傑作ですので、迷ってる人はさっさと買えば良いと思います。