私は私を認めないものを愛する

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文月さんの日記の最新エントリを受けて、少し思ったことがあったので、こちらに書いておきます。



安易に何かを傷付けるような発言を不用意にしてはならない、というのは同意――というか非常に棘が突き刺さるんですけど。


自分の好きなものを強く批判している人がいる、そのことに対しては私は憤りは感じないんですよね。逆に『自分が好きなものに対して、全く反対の捉え方をするのか』と、面白く感じます。


一つ例をあげますと――数年前、私はローラ・ヒレンブラントの『シービスケット』という本を読んで、とても感動したのですね。お勧め魔の私は早速競馬好きの知り合いに勧めたんですけど、その知り合いには詰まらないと切り返されてしまったわけです。


そこで、理由を聞くと『馬がメインの物語じゃないから』という話だったんですね。


確かにシービスケットは、馬自身のこともさることながら、より多くの筆がシービスケットに関わったスタッフたちについて割かれています。特に前半は彼らの挫折の日々が丹念に綴られており件の主役については殆ど言及されず、そして中盤以降も作者の注目の方向はぶれることなくスタッフに向けられています。シービスケットは、一匹の馬を伝説へと引き上げたスタッフの、苦闘の物語という側面が非常に強いわけです。


馬自身への魅力、というものを物語に求めれば、確かに物足りないものであるなあと、納得することができました。そして同時に『私はスタッフの苦闘の物語の側面が好きだったからこそ、楽しく読めたのだし感動したのだ』と、より深く理解することができました。


同一の作品に対する相反する意見はそのような効用があるし、そして互いの考え方、物語の捉え方についても理解を深めることができます。作品に否定的な意見ってただマイナスなものではなく、そういう使い方もあると思うのです。


だから私は自分の好きなものを批判されても、怒りは覚えません。寧ろある種の感謝の念すら覚えます。



だから私は、Webに批判的な感想を乗せることは、作品に対するスタンスの違いを楽しむために、相当程度、許容されて良いんじゃないかと思います。本音を言うと、そのためなら創作者なんてちょこっとばかり傷ついたって構わないんじゃないかなあ? みたいな不謹慎をも思います。


安易で早計な酷評でなければ、作家だってサービス業の一つで批判や苦情を受けるのが仕事の一つのようなものですし、許されても良いんじゃないかなと思います。覚悟とか責任とか、そういう重いのはできればなしにして欲しいなあというのが、同じく本音です。


批判を兎角、封じ込めるような風潮になると、結果的にWeb感想のスフィアの面白さって激減しちゃうと思いますよ。まあこの辺は個人の感覚にもよるのでしょうけど。やっぱ、ネガティブコメントは全体的に駄目だろうって人もいるでしょうしね。ただ、覚悟とか厳しいものを沿えずとも、自由度はある程度認められて然るべきじゃないかなと思うのでした。

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コメント

  1. 文月そら より:

    批判をするな、という話をしたつもりではないんですよ。

    その一つ前のほうの話がまず前提としてあって、「観てないですけど」「読んでないですけど」「プレイしてないですけど」といいつつ、あるいは明らかに最初から鑑賞する気なぞなく、気持ちよく叩くためだけに作品に触れて、世の中で袋叩きになっている事象を叩きまくろうとする動きをみかけるので、そういうのは好きでないってことなんです。

    あなたが見もせずに叩きまくった作品にも好きな人はいて、その人はその祭りで、もしかしたら存在したかもしれない『この作品を好きな人』という存在が先入観によって潰されてしまうことに心を痛めているかもしれませんよ、という話なのです。

  2. お~か より:

    通りすがりに失礼します。

    結局のところ、お二人とも言いたいことは一緒なのでしょうね。
    あるコンテンツに対してその良し悪しを語るなら、まずその中身に触れるのが第一であるし、当然のことだと思うんですよね。その上で、気に入らないならただ嫌い、ではなく、どこがどう悪いか、まで書くべきだと思います。
    maskman3さんが本を貸した方にしても、内容を読んだからこそ「思っていたものと違った」という感想が出てきた訳ですし、それが仮に少しも読まずに「こういう本ってつまらなそうだから」では納得も出来なかったでしょう。

    …まぁ、触れてもいないものを触れた気になってしまうのも、情報過多のwebの弊害なのかなぁ、とか。あ、論点がずれましたね。

  3. 通りすがり2号 より:

    安易で早計な酷評が兎に角多いですよね。
    安易で早計なのに、酷評…なのが。
    自覚的にこれをしている人はまだマシですが、無自覚に行う人も本当に多い…。

  4. 仮面の男 より:

    ■文月さん
    >その一つ前のほうの話がまず前提としてあって
    あー、でしたら読み違えたところがありますね……すいません。その前のエントリとの流れで読んだので、少しごっちゃになったところがあったのかもしれないです。

    観もせずに……ということについては私も覚えがないわけではないので、あまりはっきりと言えないのが面目ないというか。

    ■おーかさん
    そうですね、単につまらないと書くだけでは、不特定多数に傷と不快感を浴びせるだけになってしまう。それなら書かないか、せめて議論の糧になるような感想をあげるべきなのでしょう。

    何かをきちんと嫌うのは、きちんと好きになるのより難しいことではあるのですけどね。少し下手をすればすぐ感情過多になってしまいますから。

    >Webの情報過多
    確かにAmazonの感想や、2ch系のまとめを見ると、半ば読んだ気分になれますよね。これも気をつけないとなあ……。

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