『電脳コイル 4, 5』[宮村優子/徳間書店]

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先月に4巻、今月に5巻を読んだので二冊纏めて。相変わらず微妙な年頃の子供たちの、シニカルさや独善、ある種の潔癖さを鋭い筆致で描いていて、アニメとはまた異なった面白さ、緊張感があります。そしてここにいたり、本筋も徐々に不穏当な方向へと加速してきた感じです。


これまでは物語としてはやや薄く、その内容もアニメとの明確なずれを示唆しながらも、概ね同じ流れで物語が進んできましたが、4巻中盤から話がぐっと小説オリジナルの方向にシフトしてきたのです。


当初からあおられてきた決定的な喪失の予感が眼鏡の秘密、大人たちの秘密、大黒の秘密と相俟り、いよいよヤサコやイサコを始めとする子供たちに、強烈に圧し掛かってきた感じです。


その中でも特に印象に残ったのは、大黒市の大人がねっとりとした不気味なものとして強調され、描写されていた点です。


アニメではメガばあなど一部の例外を除き、大人は拡張現実より現実を重視するものとして、二つを等価に見る子供との対比として描かれており、それ以上の役割はあまり与えられていませんでした。


しかし小説版では、眼鏡を使えなくなったもの全てがある種の装置、あるいは結界のようなものであるかのような描写があり、侵すものは例え実の子供であっても容赦しない、そんな無慈悲さが端々から滲んでいます。まるで操られていることを知らず、滅びの街で暮らす生ける屍のような。


まだ雰囲気としては明るいのですけれど、これから話が進むにつれ、アニメの19話や23話とは違った意味でうすら寒い展開になるかもしれません。最悪、街の全てを敵に回す、蹂躙される、そんな展開になるかもしれないわけで。


続きが楽しみである一方、酷く不安にさせられる、そんな二冊でありました。

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