『時砂の王』[小川一水/ハヤカワ文庫]

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目次とあらすじから察して、最初は割と小粒な物語なのかと思って読み始めたのですが、300ページ弱の中に遥けき時の流れと、永劫を費やしてきた男の苦悩と、そしてその絶望的な最後の戦線の壮絶さが、見事にぎゅっと詰め込まれており、壮大な佳作となっておりました。これは氏の作品でも、かなり上に来る完成度ではないかしらん。


兎に角も主人公であるメッセンジャー・オーヴィルの、時代を経るごとに絶望へと摩り替わる、しかし何がしかの理想を纏った主義や行動が、痛々しくも格好良く、そして切なかったです。


振り返ると、作中で語られている時間理論はちょっと誤魔化してるなあという気がしないでもないのですが、まあその辺は軽い添え物くらいに考えておくのが吉だと思います。

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