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少年(たち)が鉄塔を、終点から基点に向かって遡りながら進んでいく、大筋としてはそれだけなのに、胸が躍る作品でした。夏の日、小学校五年の少年にしては些か大き過ぎる冒険。その精一杯さ、瑞々しさに思わず手汗握り応援したくなることでしょう。
鉄塔のことを話す主人公の少年はやもすると大人び過ぎているという印象を受けなくもないのですが、年相応の子供びたところも見せるからバランスがよく、はらはらするんですよね。
個人的には、ちっぽけなことに大仰なルールをつけて何でも楽しめた在りし日のことを思い出しました。赤い車と20台すれ違うとか、車のナンバープレートの4桁が合計20になるものをみつけては喜ぶとか。きっと種類は違えど、似たような遊びをした経験はあると思うのですが、その頃の気持ちが蘇ってきてきゅんきゅんすること請け合いです。
そういう意味では作品内の主人公たちと同じ小学生や少し上の年の子供ではなく、既に大人となった人たち、そして心に童心を燻らせている男性が読むと、最も楽しめるのかもしれません。仮面の男さんはジャストストライクなので、後半の辺りなど目頭が熱くなるものすらありました。