前に読んだクイーン作品の『帝王死す』が全くの駄作で、読む気力が少し削がれていたのですけれど、ふとクイーン読みたい病が出てきたので、本棚から一冊、フォックス家の殺人を手に取り、読みました。
時系列的には『災厄の街』と『十日間の不思議』の間に来る話であり、父親の犯罪と戦争体験から精神を病んだ退役軍人を助けるため、エラリィが再びライツヴィルへ赴き、覆しようのない毒殺事件の逆転、ひいては真相解明に挑むという内容。
所謂スリーピング・マーダーものと呼ばれる、過去の事件を少ない手がかりと洞察から揺り返していくタイプのものなのですが、このタイプは純粋に論理が活きるためかクイーンの作風と相性が良いようで、現代と過去の狭間に揺れる事件を丁寧に解きほぐし、読者の思いもよらぬ場所へ事件を着地させるその手並みは、ミステリのお手本といって良いほど見事なものでした。
クイーンは満遍なく散らした伏線を組み立てるタイプではなく、一転突破して周りを補強するというタイプでミステリを書く作家なんですけど、本作を読んで少し考え方が代わった気がします。手管手筈は知っているけれど、作品によってやり方を変えて来ているのかなあと。まだ未読のものが多いので、もう少し読み込んでいかなければならないのでしょうね。
多分、次に読むとしたら国名シリーズのどれかでしょう。フランスか、シャムかな。