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ハードボイルドで括るにしてもあまりに素っ気ない文体、瀟洒な台詞回しは他の打海作品にも負けず劣らずなのですが、そこに話を持ってくるのならば『彼ら』の過去についてもう少しだけでも良いから割いて欲しかった気はします。そのために後半に入ってから、物語にやや移入できない部分がありました。一応ストックホルム・シンドロームやら何やらの言い訳はあるんですけど、どうしても『彼らの共和国』に心を寄せることができなかったのです。作者がそのことを拒むためにわざと描かなかったのかもしれませんが、私にとっては少し不満の残るものでした。
『彼ら』に迫っていくまでの展開が非常にスリリングで、寒気のするような緊張に溢れていただけに尚更、惜しいなと感じました。